カスタマーハラスメント防止などの観点から、店員の名札表記を変更する動きが目立ってきた。

 ローソンは6月4日、実名(名字)での記載を基本としていたルールを変更すると発表した。今後は、アルファベットによる任意の文字や、イニシャルでの表記も可能とするという。

 店舗で働く「田中さん」の場合、これまでは「たなか」と表記していたが、今後は役職と任意のアルファベット表記である「クルー TK」も可能とする。同社はその理由について「店舗で働く従業員をカスタマーハラスメントなどから守り、安心して働ける環境づくりが求められているため」としている。

 では、他の大手コンビニチェーンは名札の表記についてどういった方針を打ち出しているのだろうか。

 セブン‐イレブンでは、2022年7月から顔写真無しの名札を注文できるようにしている。従業員によって記載する情報は多少異なるが「所属する店」「ひらがなの名字」「役職(オーナー、店長など)」が基本だ。セブン&アイ・ホールディングスの広報担当者によると、加盟店オーナーや従業員の要望などを受けての対応だという。なお、ルール変更前につくった顔写真付きの名札を継続して使うかどうかは、各店舗の判断としている。

 ファミリーマートは、5月下旬から本名ではない氏名(名字)をひらがな・カタカナで名札に表記できるようにした(実施するかどうかは加盟店の判断)。「田中太郎」さんの場合だと、名札に「さとう」「サトウ」「すずき」「スズキ」などと記載できる。

 なぜ、偽名でも可としたのか。同社の広報担当者は理由として「店舗従業員からの要望」「働きやすい環境づくり」「カスハラ対応」を挙げる。自分の本名を露出させたくないというニーズに対応したというわけだ。

 では、店舗従業員の接客態度などについて利用客から問い合わせがあった場合、どのように対応するのか。広報担当者によると、レシートに記載してある情報から、どの店員がレジを操作したのか分かるようになっているという。

 「●月●日の午前●時に、●●店のさとうさんから〜」といった問い合わせがあった場合はどうか。店舗側としては「さとう」という名札を付けて勤務している従業員を事前に把握しているので、特に問題ないという認識だ。

 大手コンビニのケースを見ると、基本的には名札に表記する情報を減らす方針を打ち出しているのが分かる。

●2年前に変更したタリーズのケース

 カスハラ防止の観点から名札の表記を変更した企業では、従業員からどういった声が寄せられているのだろうか。

 タリーズコーヒーでは2022年5月から名札をイニシャル表記としている。例えば、「田中太郎」は「T.T.」となる。

 タリーズコーヒージャパンの広報担当者によると、かつては名札を「太郎 Taro」といったように、名前とローマ字で併記していた。従業員同士が気軽に名前を呼びあえる、お互いの名前を覚えやすいといったメリットがあったという。

 しかし、ある利用客が従業員の名前をSNSなどで検索し、付きまといをするという事案が発生したため、現在のルールに変更した。広報担当者は「名前をローマ字表記にすることで、従業員が安心感を得られるメリットが大きい。トータルとしては変更してよかったという認識だ」と話す。

 企業だけではなく、全国各地の自治体でも名札の表記ルールを見直す動きが出てきている。これまでは「責任感を持って接客してもらう」「利用客との距離を縮める」といった狙いから実名表記にするケースも見られたが、今後は従業員の要望を重視する方向に変わっていきそうだ。