KDDIは7月30日、2021年度第1四半期決算を発表した。料金値下げで減収した通信収入を「成長領域」で補うというここ最近のトレンドを踏襲し、結果的には前年度同期比で「増収増益」を確保した。

 この記事では、同日に行われた報道関係者向け決算説明会における質疑応答で行われた、注目すべきやりとりを紹介する。

●UQ mobileやpovo(ポヴォ)に関する質問

―― 携帯電話料金の値下げについてお伺いします。3月に始まったオンライン専用プランの「povo」の加入者数の進捗(しんちょく)と、それに伴う減収影響について教えてください。

高橋誠社長 減収影響については、プレゼンテーションでもお話しした通りです。料金を値下げすることによるお客さま還元による減収と、5Gへの移行によるデータ通信料金の増収の両方を合わせて、2021年度通期で600億〜700億円程度の減収を見込んでいます。単純な値下げによる減収はもっと大きな額ですが、データ通信料金でカバーした結果がこの予想ということになります。

 povoについては、だいたい100万契約くらいと思ってください。

―― 料金の値下げによって前期比で117億円の減収となったとのことですが、3ブランド(au、UQ mobile、povo)の中で影響が大きいのはどれでしょうか。

高橋社長 数字等はお答えできないのですが、今回の値下げでUQ mobileやpovoへとユーザーに流れている分、auの稼働数は減るという構造となっています。当然、そういう意味で一番影響が出ているのはauブランドです。

―― 先日、ソフトバンクがLINEMOブランドで3GBで月額990円のプランを出しました。povoブランドで対抗するお考えはあるのでしょうか。

高橋社長 新しいプランについては、お客さまの声や利用動向などを注視しつつ、対応を考えていきます。

 ただ、私たちもUQ mobileで「でんきセット割」を適用すれば月額990円で3GB使えるプランを用意しています。(でんきセット割の)お客さまからの評判は良くて、順調に加入いただいております。(LINEMOとは異なり)UQ mobileのプランはデータの繰り越しもできます。これで、私たちのモメンタム(いきおい)を付けていくことに注力したいと考えています。

―― povoの「トッピング」ですが、サービス開始から新しいものは出てきてないと思います。現状のニーズや今後の展開について、可能な範囲で教えてください。

高橋社長 まだ追加のトッピングは公表していません。特に今は(先述の)でんきセット割などUQ mobileに力を入れている状況で、(povoの)プロモーションはそれほど入れていません。

 ただ、povoは私個人として非常に思い入れがあるので、今すぐお話しできることはありませんが、今後にご期待いただければと思います。

―― 5Gでデータ通信料金を上乗せするという話があったかと思います。UQ mobileとpovoも「2021年夏」に5G対応する予定だったはずですが、もう夏です。いつ頃5G対応するのでしょうか。

高橋社長 UQ mobileもpovoも5Gに対応することは決まっています。今日は時期の話はしていませんが、近日中にお知らせできるように準備を進めています。

―― povoについて、5月の通期決算説明会では「100万契約が見えてきた」と言っていたかと思います。契約数の伸びが鈍化しているということなのでしょうか。

高橋社長 povoの契約数はスタート時に急激に上がったのですが、UQ mobileのモメンタムを付けるというプロモーション戦略を取ったこともあり、スタート当初と比べると(増加数は)落ち着いています。

●ネットワークに関する質問

―― 楽天モバイルが「半導体不足」を理由としてLTE基地局の開設計画を遅らせることになりました。御社の5G基地局の設置計画や端末の調達には影響が出ているのでしょうか。

高橋社長 半導体不足と、それに起因する他の部品の不足については、購買部門を中心に情報を集めている所です。

 基地局装置については、メーカーが必要な半導体を事前に確保していると聞いている一方で、(基地局と交換局を結ぶ)伝送装置に一部影響(遅れ)が出ているとも聞いています。ただし、基地局建設について大幅な遅れは出ない見込みです。状況は日々変わっているので、慎重に様子を見ながら対応していきたいと思います。

 5G基地局は「数」の問題もありますが、生活動線に立脚して建設を進めています。数が少しショートしたとしても、動線にこだわることでお客さまにより良いサービスを提供できるように努めます。

 一方、スマートフォン(端末)については、今のところは大きな影響があるとの情報はメーカーから聞こえてきません。ただ「AppleのiPhoneの供給に影響が出るのでは?」といった報道も一部にありますので、ここは慎重に情報を集めて、影響の出ないようにしていきたいと思います。

―― 3G(CDMA 1X WIN)の停波が(2022年3月に)迫っています。3Gを利用しているユーザーの移行状況をどのように評価していますか。

高橋社長 個人と法人のお客さま双方において停波に向けた準備を進めていますが、今のところは順調に進んでいます。先ほどの半導体の話と関連して、法人で使っているモジュールの供給に一部影響が出ていますが、お客さまとの話を進めていきながら、予定通り年度末(2022年3月末)には3Gを停波できる段取りで進めています。

―― ソフトバンクやドコモよりも早く3Gを停波することのメリットとデメリットを教えてください。(筆者注:ソフトバンクは2024年1月下旬、NTTドコモは2026年3月31日をもって3Gサービスを終了する予定)

高橋社長 一番大きなメリットは設備の運用コストが下がることです。3Gの設備はそれなりに消費電力が大きく、(LTEや5Gと比べると)効率が悪くなっています。3Gの設備が4G(LTE)や5Gに置き換わると、その分(消費電力が削減できるので)「脱炭素」という面で貢献できます。

 悪い面ということでは、停波に伴うコストが今年度(2021年度)に計上されるということです。

●その他の質問

―― 今回の営業利益の増減図を見ると、「その他(主要セグメント以外)」で126億円の利益が出ているようです。具体的には何が増収をもたらしているのでしょうか。

村本伸一副社長 いろいろなも要素があります。詳細な内訳の数字は(開示を)控えさせていただきますが、プラス要素として働いているものの1つとして(楽天モバイルからの)ローミング収入があります。海底ケーブルの修繕費用やポイントに関する引当金の「戻し」もありました。

―― ソフトバンクのLINEMOの990円プランや御社の(UQ mobileの)でんきセット割によって、MVNOがさらに影響を受けるのではないかという指摘があります。高橋社長は、今後MNOとMVNOはどのように市場を分け合っていくとお考えでしょうか。

高橋社長 なかなか難しい質問だと思います。今の日本(総務省)の政策は、MNO4社が競争をしてスイッチングコスト(事業者乗り換えに伴うコスト)を下げることで、より「お客さま還元」を広げていこうという方向です。

 前から言っていることではありますが、競争によってサービスをよくしようということは「望むところ」というか、やっていかないといけない最大のテーマなので、当然努力していきます。これによって、我々のネットワークを使っていただいているMVNOも料金が下がっていくものと思います。

 ただ、今後これ(競争の状況)がどうなっていくかについては、そこを考える余裕があまりありません。料金還元(値下げ)によって収益が落ちていくわけなので……。これを成長分野で取り戻すことに一生懸命です。

―― 雑誌で菅義偉内閣総理大臣が「携帯電話料金はさらに下げられる」という旨の発言をしていました。答えづらい面もあると思いますが、率直にどう思いますか。

高橋社長 その雑誌は見ていなかったので、答えるのは難しい面もあるのですが……。

 繰り返しになりますが、我々が値下げをして、それがお客さまに還元されるのは競争の結果だと思うんですよね。スイッチングコストを下げて、お客さまが移動しやすくなって、結果(MNO4社が)安い料金になったと。この流れは、これからも続いていくのだろうと思います。

 我々も企業なので、(値下げによって)減収影響が出たら、それに対して5Gを投入で新たなデータ通信料を得たり新たな事業領域を開拓したりと、さまざまな事業領域でリカバーしながらやっていきます。その繰り返しです。