約2年ぶりに登場した第6世代の「iPad mini」が、9月24日に発売される。これまでのiPad miniはホームボタンのあるiPadをギュッと凝縮したようなスタイルだったが、第6世代ではデザインを一新。2020年に発売された「iPad Air」や、2018年以降の「iPad Pro」と同様、前面全体がディスプレイだけになり、モダンなたたずまいになった。

 性能も一新しており、プロセッサにはiPhone 13シリーズと共通の「A15 Bionic」を採用。Proモデル以外のiPadとして、初めて5Gに対応するモデルでもある。その持ち運びやすさや汎用(はんよう)性の高さから根強い人気のiPad miniだが、フルモデルチェンジした第6世代の使い勝手はどうか。発売に先立ち、実機を試用することができたため、ここではそのレビューをお届けしたい。

●片手でギュッと握れるコンパクトさで、Touch IDも便利

 フルモデルチェンジを果たしたiPad miniだが、サイズ感は従来モデルと同じでタブレットとしては非常にコンパクトだ。スペック上の横幅は134.8mm。スマートフォンほど持ちやすいわけではないが、ある程度手が大きければ、片手でギュッと握ることができるサイズ感だ。強く握ることができるため、移動中に立ち止まって取り出しても落としてしまう心配は少ないだろう。10型前後のタブレットでは、こうはいかない。

 片手で握れるサイズ感は、Apple Pencilの使い勝手も広げそうだ。片手にiPad mini、もう一方の手にApple Pencilを持ってもしっかりホールドできるため、あたかもノートやメモ帳のように利用できる。あくまで感覚的な話だが、サイズがコンパクトで凝縮感があり、iPadシリーズの中で最も“文房具”としての色合いが濃い端末といえる。

 とはいえ、ディスプレイに写る映像の迫力は、これまでのiPad miniより大きくなっている。ホームボタンがなくなった分、ディスプレイが本体いっぱいまで広がっているからだ。1世代前のiPad miniは7.9型だったのに対し、第6世代のiPad miniはサイズが8.3型まで拡大している。わずか0.4型のように思われるかもしれないが、ディスプレイの大きさは数字以上に実感しやすい。

 また、ホームボタンがなくなって画面下の額縁が細くなったことで、映像への没入感が増した。ホームボタンが前面に付いていると、どうしても画面を見る際に目に入ってしまっていたが、黒い額縁だけならあまり妨げにはならない。iPad Proなどと比べると、やや額縁が太いような印象はあるものの、前世代のiPad miniと比べるとデザイン自体も洗練された印象を受ける。

 Apple Pencilは、iPad AirやiPad Proと共通の第2世代になり、側面にマグネットで貼り付けられるようになった。こうしたモデルをお使いの方はご存じかもしれないが、磁力はそこまで強いわけではないため、軽い衝撃で落ちてしまう。本体に付けられるからと言って、そのまま持ち運ばない方がいいだろう。フレームのデザインもiPad AirやiPad Proに近づいている。

 一方で、サイズ的な制約があったためか、音量ボタンは縦位置で画面上部、横位置で左側面に移動している。従来のiPadとは実装されている場所が異なることもあり、慣れるまでは少々違和感があるかもしれない。また、Touch IDを統合したトップボタンも、上部に搭載されている。指紋の読み取りはスムーズで、画面を点灯させた際に自然とロックが解除されるユーザビリティは評価できる。マスクを着けたままでも使いやすいのがうれしい。

 個人的にはiPad Airのようにキーボードの利用頻度が高いと、Touch IDはその都度指をキーから離さなければならず、少々面倒だったが、iPad miniは持ち運んで外で使う機会の方が多い。このようなユースケースの違いもあり、同じTouch IDでもiPad miniの方が使い勝手がいいと感じた。

●iPhone譲りのハイパフォーマンスは動画編集やゲームに生きる

 コンパクトさに目を奪われがちなiPad miniだが、パフォーマンスも十分な高さだ。採用しているプロセッサは、iPhone 13シリーズと同じA15 Bionic。ベンチマークアプリでスコアを確認してみたところ、性能的にはiPhone 13や13 miniに近いようだ。A15 Bionicは無印のiPhone 13/13 mini用が4コアのGPU、Proモデル2機種が5コアのGPUだが、iPad miniに搭載されているものは後者の5コア版。GPUの性能を測るMetalスコアも、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxとほぼ同じだった。

 iPad Proには一歩及ばないものの、パフォーマンスの高さははより画面サイズの大きいiPad Air以上。小さいボディーに、強力な頭脳を収めたのが新しいiPad miniというわけだ。そのおかげで、写真はもちろんのこと、動画の編集も非常にスムーズにできる。試しに、iPhone 13 Proを使って4K、60fpsで撮った5分間の動画に標準の写真アプリで編集して、そのまま書き出してみた。動画は傾き補正やフィルターをかけ、露出を補正しているが、15秒ほどですぐに保存された。

 また、iPad mini自体は動画で深度の取れる「シネマティックモード」での撮影には非対応だが、同モードで撮った写真を写真アプリで編集することはできる。iPhone 13シリーズと同様、被写界深度やピントを合わせる位置を後から変えることが可能。ディスプレサイズが大きく、さらにApple Pencilも使えるため、iPhone 13シリーズで直接編集するよりもスムーズに操作ができると感じた。iPhone 13シリーズで撮った動画は、AirDropでiPad miniに移してもいいし、iCloudで同期してもいい。コンパクトなiPhone 13 miniで撮影をしたあと、iPad miniでじっくり編集するというのもオススメできそうな使い方だ。

 A15 Bionicを搭載しているということは、iPhone 13シリーズをターゲットに開発された豊富なアプリの資産を生かしやすいことも意味する。特にゲームアプリは、手のひらサイズのiPhoneでプレイするより、iPad miniの方が迫力も増す。3Dグラフィックスや機械学習などをフル活用したアプリをスムーズに動かせるのは、iPad miniの魅力といえる。重量もWi-Fi版が293g、Wi-Fi+Cellular版が297gと、ともに300gを切っているため、長時間遊んでも疲れにくい。 

●超広角のインカメラや「センターフレーム」が便利、5Gの通信も快適だ

 解像度やフレームレートの高い動画ファイルやゲームなどのアプリを扱っていると、どうしても通信量が増してしまいがちだが、それをサポートするのが5Gだ。5Gに対応したiPadは、12.9型、11型のiPad Proに続いて3機種目。無印のiPadやiPad Airよりも早く5Gをサポートした点には、驚きがあった。日本では、ドコモ、KDDI、ソフトバンクがiPad miniを取り扱っており、それぞれの5Gもサポートする。

 ただし、楽天モバイルに関しては、残念ながらiPad miniを販売していない。こうした事情もあってか、楽天モバイルのeSIMプロファイルをセットしても、5Gを設定するメニューが現れなかった。とはいえ、4Gまでなら問題なく利用できる。同社の5Gエリアは他社に比べるとまだまだ見劣りするため、現状では非対応でも大きな問題はない。一方で、iPad miniにも5G接続時にFaceTimeや動画の画質を上げる機能が搭載されている。こうした恩恵を受けられないのは、少々残念だ。

 もう1つの新機能が、「センターフレーム」への対応だ。センターフレームとは、インカメラに映ったユーザーを自動的に追尾してフレーム内に収める機能のこと。4月に発売されたiPad Proから搭載が始まったが、早くもiPad miniで利用できるようになった。超広角のインカメラを使い、ユーザーが写っている部分を中心に自動でズームするというのが基本的な仕組み。人物の認識には、Appleが得意とするオンデバイスの機械学習が用いられている。

 筆者もiPad Proでセンターフレームを使っているが、姿勢を多少崩してもカメラが自動で追従してくれるおかげで、本体の位置をズラす必要がなく、ビデオ会議に集中できる。一方で、それ以前のクセが抜けきらないこともあり、ついつい本体を動かしてしまうことも。便利な機能なのは事実だが、ユーザー側がセンターフレームの仕組みに慣れる必要もある。

 実際、インカメラがどの程度広角かというと、ご覧の通り。自撮りだと、腕が不自然に長く見えてしまうほどで、3〜4人程度のグループ撮影にも利用できる。ただしこの画角だと、1人でのセルフィーが撮りにくい。そのため、カメラアプリを立ち上げた際には、ちょうど1人分の顔が入るよう、ズームされた状態になっている。超広角カメラの画角をそのまま生かしたいときに、拡大ボタンをタップする仕組みだ。

 このように第6世代のiPad miniは、1世代前の第5世代と比べ、進化している点が非常に多い。持ち運びやすさはそのままにフルモデルチェンジを果たし、パフォーマンスも大きく上がっている。持ち運ぶ機会が多く、外での利用頻度が高くなりそうなだけに、5Gに対応したのもうれしい進化といえる。スマートフォンと比べると画面サイズが大きいだけに、特にiPhone 13 miniのような小型端末と一緒に持つと相性はよさそうだ。