年間1億6000万円――。これはYouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット」(スパチャ)を使い、日本のVTuber桐生ココさんが2020年に受けたスパチャの総額だ。コロナ禍でイベントの開催中止を余儀なくされたアーティストやクリエイターもYouTubeのスパチャ機能を活用し、中には4人組のゲーム実況&音楽制作ユニット「M.S.S Project」(MSSP)のように2日間で1億円以上(推計)を集めたグループもいる。

 Instagram、Clubhouseでも機能が実装され、最近では米Twitterが英語版の公式モバイルアプリで、一部のクリエイターやジャーナリスト、非営利団体を対象に投げ銭機能「Tip Jar」の提供を始めるなど投げ銭機能に注目が集まっている。

 インフルエンサーや芸能人だけでなく、一般ユーザーでも簡単に投げ銭で収益を得られる状況になりつつある中、その収益を税制上どう扱うのかという疑問の声がTwitterなどで出ている。チャンネル登録者数28.7万人を誇り、“税理士YouTuber”としても活動中の大河内薫税理士に話を聞いた。

●20万円までは基本的に「雑所得」で処理、申告不要

 確定申告で扱う所得は事業所得、配当所得、不動産所得など計10種類存在する。大河内さんによると、一般的な会社員が投げ銭を受けた場合、多くの場合は「その他」に該当する「雑所得」の扱いになるという。雑所得では20万円以下は申告不要だ。

 ただ、給与と雑所得に加え、ふるさと納税やNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)、医療費、住宅ローンなどで確定申告をする場合は、20万円以下であっても1円単位から税申告する必要があるという。申告漏れが発覚すると「当然ながら、追徴課税の対象となる」と大河内さんは指摘する。

 また、副業が原則認められていない公務員の場合、申告額が多いと「副業と指摘される可能性があるので注意が必要」という。

●副業可能なら「開業届」を出しておくのも一手

 Twitterの投げ銭機能は現時点で日本版アプリでは実装されておらず、多くのユーザーにとって使い勝手が不明な点が多い。大河内さんは「不安な人は投げ銭機能をオフにしておくのが望ましいが、それができるか不明」とする一方、「現時点でいえるのは、一定のフォロワーを抱えるユーザーは開業届を出すのも方法の一つだ」と指摘する。

 勤務先が副業を認めていれば、開業届を出しておくことで、投げ銭の収益が「事業所得」の扱いとなり、税制上の優遇措置を受けられるからだ。これに対し、雑所得には優遇措置が一切ないのだという。

●議員など公人は「投げ銭機能をオフにしておくのが無難」

 近年では現役の政治家が自身の活動報告や政治的な意見を発信する場として、TwitterやYouTubeを活用するケースもある。Twitterでは例えば、河野太郎行政・規制改革担当相のフォロワーは232.2万人(5月14日時点)で、インフルエンサー並みのフォロワーを誇る。

 大河内さんは、こうした政治家に対しても「YouTubeのスーパーチャットも含め、機能をオフにしておくのが無難」と話す。政治団体以外からの寄付を禁じた政治資金規正法に抵触する恐れがあるためで、「オフにしておかなければ、嫌いな政治家を陥れようと悪意を持った人が投げ銭をする可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 日本の現在の税制度は複雑だ。「日本の税制度は遅れている。もっとフレキシブルになってもいい」と大河内さん。例えば、政治家に対する投げ銭も、政治家としてではなく、個人事業による所得として認めるといった具合だ。

 コロナ禍になって以降、一部報道によって大人数での会食や政治資金パーティーの開催が発覚した政治家が批判されるケースが増えた。大きな収入は期待できないかもしれないが、気軽に投げ銭できるような仕組みになれば、そうした報道も少しは減るかもしれない。

●話し手:大河内 薫(おおこうち かおる)

株式会社ArtBiz代表取締役。税理士。日本大学芸術学部卒という税理士として異色の経歴を持ち、芸能・芸術/クリエイターに特化した税理士事務所を経営。また、最新メディアやSNSでの発信を得意とし、税理士として日本最大級のYouTubeチャンネルを運営する(登録者28万人超)。現在はオンラインサロン「大河内薫マネリテ戦略室」を活動の中心に据えて、お金の教育を義務教育に導入すべく活動中。

著書「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!」(サンクチュアリ出版)は16万部突破。

Twitter:@k_art_u

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