飲食店やコンビニのアルバイトがふざけて不衛生な行為を行い、炎上して店舗に被害を追わせる事件を、俗に“バイトテロ”と呼ぶようになった。ここ最近、ネットニュースやテレビにてバイトテロ事件が数件報道されている。

・6月5日:コンビニ店員らが店のバックヤードに設置されたモニターで、レジに並ぶ女性客の胸をのぞく(TikTok)

・6月8日:ピザチェーンの店員がシェイクをヘラですくってなめる(Instagram)

・6月13日:カレーチェーン店員が休憩室で賄(まかな)いのカツカレーに陰毛らしきものを「スパイス」と称して投入する(Instagram)

 このようなアルバイトが起こす不適切行為が最初に社会問題となったのは、2013年のことである。この件については、当時の連載でもコラムを2本執筆している。

・バイト炎上(1)

・バイト炎上(2)

 同じような事件が再び頻発し始めたように見えるが、8年前とはいろいろ事情が変わってきている。新しい知見も加えつつ、こうした炎上事件の背景にあるものを考えていく。

●8年で変質した「炎上」

 まず8年前と昨今の違いとしては、不適切な行動の証拠として出回るものが、写真から動画に変わったことが大きい。多くの青少年は、悪ふざけの証拠として、写真よりも動画を気軽に撮影・投稿するようになっている。また、動画を扱えるメディアも多様化している。

 炎上におけるプロセスも、変わってきている。8年前は、問題の写真がTwitter上に投稿され、同じTwitterで数万人規模の人が話題に飛びつき、リツイートなどのアクションを行っていた。そこから旧2ちゃんねるなどの匿名掲示板でスレッドが立ち、本人特定や電凸などのアクションは匿名掲示板上で行われていた。テレビや新聞メディアは後追いで、一連の事件を社会問題という形で報じていた。

 今回のバイトテロ事件のうち、カレーチェーンの話題を追いかけてみると、投稿された動画はもともとInstagramの鍵付きアカウントで、24時間で消える「ストーリー」に投稿されていた。その動画がTwitterに転載されたのが、6月13日午前1時半ごろである。いわゆる「通報」の格好だが、通報先は炎上案件を扱う人気YouTuber宛となっている。彼に取り上げてほしい、ということであろう。

 これを最初にニュースとして報じたのは、6月14日午後4時10分のJ-CASTニュースではないかと思われる。

 一方Twitterでの動きをYahoo! リアルタイム検索で追ってみると、やはり14日午後から急激に言及が増えている。ただ、リツイートされているのは同日16時51分にJ-CASTより転載されたニコニコニュースの記事のようだ。ユーザー同士の口コミで広がるのではなく、ニュース記事となったものが循環する格好である。8年間でTwitterの温度が随分下がったのを感じる。

 言及数としては、炎上期間の範囲で絞ると8500件弱と、炎上事件としては意外に少ない。いやどれぐらい言及されれば炎上なのかの基準は持ち合わせていないのだが、かつての炎上事件が万単位であったのに比べると、少なくとも「ネットで大炎上」とはいえないのではないかという気がする。この事件が「炎上」というのは、実数と関係なくレッテルが貼られただけという可能性も指摘しておきたい。

 いわゆる「タレコミ」された側の人気YouTuberは、6月15日のライブ配信でこの話題を取り上げているが、動画タイトルに炎上事件の項目は入っておらず、内容の部分に「バイトテロ動画紹介」と記載されているにとどまる。

 一方テレビの動きは早かった。6月15日のTBS朝の情報番組「あさチャン!」で午前6時35分ごろに単体のニュースとして報じられているようだ。また同日午後のフジテレビ「バイキングMORE」でも取り上げられている。報じる理由も、炎上しているかどうかはあまり関係なく、不適切な行為をしていることを問題視している。

●結局、「何の問題」なのか

 こうしたバイトテロ事件が起こると、また同じようなことが始まったのかと危惧される方も多いだろう。だが、食品を扱う場所で不衛生な行為をして面白がるような悪ふざけは、8年前の炎上が収まってからこれまでゼロだったのだろうか。単に表に出ないだけで、調子こいた子どもらの「悪ふざけそのもの」は、なくなっていなかったと考えるのが妥当だろう。

 8年前もそうだったのだが、こうした不適切行為の証拠は、多くの人がネットを探し回ることで続々と見つかった。つまりこうした問題行為は、ネット上には定期的にアップされているのだが、ニュースバリューがなければ日の目を見ない。だがいったん波が来ると、次々に発見される。そういうものではないだろうか。件のカレーチェーンのタレコミも、「“またしても”悪質なバイトテロを発見したので取り上げてください」としてツイートしていた。

 8年前の事件の後、学校は大きくITリテラシー教育に転換した。そもそも8年前の事件写真の多くは、Twitterが誰でも見られるオープンなものとは知らず、仲間内だけのクローズドなものだと勘違いしてアップしたものがほとんどだった。ろくに仕組みも知らずにSNS使うんじゃないよ、という話であり、そこにITリテラシー教育の楔(くさび)が打ち込まれた。

 一方カレーチェーンの報道を見ると、もともとInstagramの鍵付きアカウント、しかもストーリーズの投稿ということで「なぜネット上で流出したのかは不明」だというが、そんなもんオマエの仲間内にオマエを売って笑ってるヤツがいるからじゃんか、としか言えない。

 ここが学校教育の限界、ということなのかもしれない。ネットの仕組みは教えた、一方で「クラス全員一致団結、仲間を信じて体育祭頑張ろう!」みたいな教育の中で、「でも結局誰も信用できないんだよね」という話をどうやって矛盾なく子供に教えられるのか。筆者が教員なら、相当悩むところだと思う。

 アルバイトを扱う食品系のお店は、今後職場にスマートフォン持ち込みを禁止したり、リスク教育をきちんとやっていくみたいな対応に追われることになると思うが、多分それでは「子どものバイトが悪ふざけをする」ことは解決できない。抜本的な解決は、食い物の現場で汚いことするなということであって、ネットに動画出すなということではないはずだ。

 結局これは、人のマネジメントの問題である。これまで流出した悪ふざけ動画は、一人で撮影したものはほとんどなく、多くは同じ年ぐらいの「仲間」の撮影である。つまり年頃の子どもが2人3人集まれば、悪ふざけするのは止められないのだ。

 だからシフトは必ず年の離れたものを1人加えて休憩入れるとか、一緒に悪ふざけする間柄になれない者を入れて組むといったことが必要だ。バイトが喜ぶようなシフトを組むのがそもそも間違いなのである。

 鍵付きアカウントからの流出も、同じくマネジメントの問題である。オマエがハマってるのを見て手をたたいて笑いそうなヤツがいるところで、自分がどういう振る舞いをすべきか。他人を動かすのではなく、もっと自分の行動をマネジメントすべきだった。

 どこにも悪ふざけできる場所がないのは窮屈だろうが、少なくとも他人がマネジメントする場所で悪ふざけは適切ではない。

 最後にこうした事件を取り上げるメディアに苦言を申し上げたいが、こうした悪ふざけをしたものに厳罰を求めたり、高額な賠償金を例に出して脅しつけるのは、抑止力としては適切ではない。恐怖で人を管理しようとするのは悪手であると、歴史が証明している。

 加えて社会の皆さんにもお願いしたいが、こうした失敗をした若者を再起不能にすることを目的とせず、これを経験として更生できるチャンスを与えていただきたい。人生1回でも失敗したらアウト、は厳しすぎる。「若いものは失敗を恐れずいろいろな可能性にチャレンジしていけ!」と檄(げき)を飛ばす一方で、「でも残機ゼロですけどね」というのは、どう考えてもクソゲーであろう。

 われわれの社会はクソゲーではないことを、若いものに示してやってはいただけないだろうか。

(小寺信良)