この4月から「Zwift」でインドアバイクをやっていて、ずっと気になっていたことがある。仮想世界でランニングをやるというのはどういう気分なのだろうと。

 ニューヨーク、パリ、ロンドン、そしてネオ京を自転車で走っていると、必ず横にランナーがいる。自転車で走っている人たちは画面右にリストアップされているが、ランナーは名前はそこには表示されない。でも、近くに行くと名前が浮かび上がる。

 ゲームの「NPC(Non-player Character)」みたいなものだろうか。彼らはどういう環境で仮想世界の中を走れているのだろうか。調べてみた。

 まずは、彼らランナーが走る世界に潜り込まなければならない。

 Zwiftはもともとサイクリング専用のトレーニングサービスとしてスタートした。Zwiftでサイクリングするには、多くの場合、ロードバイクとローラー台が必要。ゼロからそろえようとすれば、安くても10万円台半ばくらいの予算がいる。コンピュータやディスプレイは別だ。

 だが、Zwiftのもう1つのモード、ランニングであればもっと安く済む。トレッドミルと足に取り付けるセンサーを使えば、自分の脚でZwiftの仮想世界を走ることができるのだ。

 トレッドミルは施設にあるものを使えばよい。例えば筆者の最寄りの公共施設、練馬区上石神井体育館のトレーニング室は2時間200円、杉並区上井草スポーツセンターのトレーニングルームは1回500円で利用が可能だし、筆者が通っているスポーツジムは早朝利用専用コースが月額3300円で利用できる。

 近くにトレッドミルを備えたスポーツ施設がない場合には家庭用トレッドミルを購入して使う手もある。Zwiftで使えたという報告のある機種は3万円台からあるようだ。

 センサーについては、純正の「Zwift RunPod」が39.99ドルと最安なのだが出荷できるのは米国のみ。高機能な「Stryd」は3万2000円とちょっと高い。筆者はiPhoneで動かしたかったので、Bluetooth接続できる「Polar Stride Sensor」を購入。Amazon.co.jpで9702円だった。

 ランニングの場合は、サイクリングの10分の1以下のコストでZwiftの仮想世界を走れるというわけだ。

●Polar Stride Sensorを試す

 Polar Stride Sensorが届いたので、早速試してみた。

 ゴム製のケースをスニーカーのひもで足に装着し、そこに本体をはめ込む。デバイスには表示部はなく、LEDランプもない。Polar Beatというモバイルアプリでペアリングするだけだ。

 あとはZwiftを起動して、接続されたデバイスを選択。すると、Polar Stride Sensorから送出されたデータがケイデンスとスピードに反映される。

 試しに、近所の夜道を、iPhoneを手に持ちながらZwiftと接続して走ってみた。走り出す前と走り終えた後でZwiftを見ると、ちゃんと動作していたようだ。当然のことながら、リアルな道をiPhoneの画面を眺めながら走るのは危険なのでやってはいけない。

 翌日、最近通い始めたスポーツジムのトレッドミルで試してみた。ジムにあるMatrixというブランドのトレッドミルを使用。これはスピードやケイデンスを取得してBluetoothなどでデータを転送する機能は備えていないが、そこを補うのがPolar Stride Sensorである。

 走るスピードは、トレッドミルの方で調整する。どのトレッドミルにも備わっている速度ボタンで、自分に適した速度に合わせる。Zwiftのトレーニングメニューでは、「このスピードでこれだけの時間走れ」というオーダーが来るので、手動で合わせることになる。

 iPhoneのZwiftアプリを起動し、初期画面でセンサーの接続を確認すると、スタート。ルート、トレーニングメニューを選んで走行開始だ。

●iPhoneでZwiftトレッドミルの限界

 やってみて分かったのだが、走りながらだとiPhoneの小さな画面では、速度の数字を読み取るのがやっとで、トレーニングメニューから出される指示が分からない。その指示に合わせてトレッドミルの速度を変えなければならないのに、読み取れないから同じスピードで延々と走り続けることになり、トレーニングの意味を成さない。

 そこで翌日、10.5インチiPad Proのセルラーモデルを「にゃんガルーパーカー2」の巨大ポケットに入れてジムに持っていき、ZwiftにつなげてPolar Stride Sensorを接続し、トレッドミルを動かした。今度は画面に出るチュートリアルがちゃんと読み取れる。「トレッドミルの速度を10.6km/時に上げろ」「速度を6.7km/時まで落として休め」といった指示に従いながら、パリ中心地、シャンゼリゼで最初の4.8kmのトレーニングコースを汗だくになりながら何とか走り終えた。

 まとめると、Zwiftランニングに必要なものは、

・トレッドミル

・足に取り付けるセンサー

・iPad

・ネット環境(なければセルラー版iPadにするか、テザリングで)

という組み合わせになる。

 シューズにセンサーを付ける以外にも、スマートトレッドミル、スマートシューズ、スマートウォッチなどで対応可能な製品があるようだが、導入のしやすさと価格においては、この組み合わせが現時点ではベストと言っていいだろう。

 そんなわけで、有酸素運動をしながらバーチャルワールドに参加する方法が1つ、増えてしまった。

 家に帰り、同じパリのシャンゼリゼルートを今度は自転車で走ってみた。横を走るZwiftランナーを見る目が確実に変わった。彼らはNPCではなく、ちゃんと自我を持ったプレイヤーなのだ。最近映画「フリー・ガイ」を見たせいだろうか。

 今度は新設された不眠都市「ネオ京」を自分の脚で走ることもできる。メタバースをカロリー消費しながら走る楽しみが倍増した。