コロナ禍が以前より落ち着きを見せ、出社を増やす企業も増えてきた。出社とリモートワークを使い分ける「ハイブリッドワーク」も普及し、IT業界の働き方は以前より柔軟になりつつある。しかし、オフィスの最適化が間に合わず「備品が足りない」「Web会議スペースが足りない」といった問題につながるなど、柔軟な働き方に対応し切れない企業も少なからず見られる。

 一方で「総務ではなく、情シスに相当する部門がオフィス作りを手掛ける」という、一風変わった手によって、働き方の向上を目指す企業も存在する。マネーフォワードだ。同社は2023年3月にオフィスを増床。改築を手掛けたのは、総務ではなく情報システム部に当たる「CIO室」だ。

 高野蓉功(ようこう)CIO率いるCIO室が手掛けたオフィスは「ケーブルは基本USB Type-Cで統一」「スマートフォン充電用のLightningケーブルとUSB Type-C完備」など、ITビジネスパーソンにうれしい“情シスっぽい工夫”が満載。果たしてCIO室が手掛けたオフィスはどんなものなのか、そもそもなぜ情シスがオフィス増床を手掛けることになったのか。実際にオフィスにお邪魔して話を聞いたので、現地の画像と共に紹介する。

 また、本取材の内容はこちらの動画でもレポートしている。オフィスの全景を紹介している他、高野CIOや、実際にオフィスで働く社員へのインタビューも実施しているので、ぜひご参照のこと。

●早速見てみる、情シスが作ったオフィス

 今回お邪魔したのは、JR山手線田町駅から近くにある「msb(ムスブ) Tamachi 田町ステーションタワーS」20階にあるオフィススペース。オフィスは大まかに執務スペース、会議室、ウェビナーや社内イベント用のスタジオ、交流スペースである「コネクト」などで構成される。

ケーブル(ほぼ)全部Type-Cな執務室

 執務スペースの特徴は、各デスクにHDMIケーブルなどがなく、USB Type-Cだけで給電・モニター入力・有線LAN全てに対応できること。煩わしいケーブルの多様性を意識しなくていいようになっているわけだ。

 それとは別に、スマートフォンなどの充電用にLightningケーブルとUSB-TypeCケーブルが1本ずつ備え付けてある。私用デバイスを充電してはいけないなどの決まりもなく、自由に使っていいという。ケーブルも散らかっておらず、見えないところに束ねられていた。

会議室もケーブル1本でカメラ・マイク利用

 会議室は広さごとに複数の種類が存在する。例えば6人程度の利用を想定したものから、1on1専用のもの、Web会議用のブースなどさまざまだ。特徴は、一部の会議室に備え付けてあるJabra製サウンドバー。音声入力・出力はもちろん、広角な映像を撮れるカメラも内蔵しており、部屋にいる全員を映すことができる。

 接続はもちろんType-C1本だ。常設型のテレビ会議システムは他にもさまざまなサービスが存在するが、すでに全社員にZoomのアカウントを配布していることなどから、比較検討の末に現在の形になったという。

 各会議室の入り口には、入退室を管理できるタブレット端末も設置。同社は会議室の予約や利用時間をGoogleカレンダーで管理しており社員がPCやスマートフォンの同アプリから「いつからいつまで使う」を入力・確認する仕組みだ。

 ただ、いちいちGoogleカレンダーを操作するのは面倒と感じる人もおり、実態に沿った入力がなされない可能性もある。そこで、備え付けのタブレット端末からも利用開始・終了を入力できるようにした。これにより「カレンダー上は埋まっているが、実際は誰も使っていない」「逆に、使っているけどカレンダー上では空室」を防いでいるという。

イベント用スタジオ・交流スペースも

 スタジオにはカメラやスイッチャー、リングライト、レフ版、照明などを完備。主に社内イベントやウェビナー実施用のスペースとして使っているという。また、スタジオを出てすぐの位置にはランチや終業後に社員同士がコミュニケーションを取るスペース「コネクト」も存在する。

●総務がいない? 情シスがオフィス増床を手掛けたワケ

 以上がCIO室が手掛けたマネーフォワードの新オフィスだ。ソフト面だけでなく、ハードの面でも働き方を改善しようという考えがあるといい、実際にサウンドバーやケーブルなどハードウェアのこだわりが目立った。

 とはいえ、通常オフィスの増改築は総務や専用の組織が担当する仕事。情シスが担当するのは珍しい。なぜ、総務がやらないのかというと、そもそもマネーフォワードには部署としての総務が存在しないためだ。

 「コロナの影響で『総務をなくそう』となった。われわれはバックオフィスを効率化する会社なので、総務の業務をオンラインでできるようにしていこう、と考えていた。そうすると必然的にITを活用することになるが、元々双方の仲がいいこともあり、全部IT部門がやったほうが効率が良いのでは、という話にまとまった」(高野CIO)。つまり、CIO室は総務の機能を吸収した組織になっているわけだ。実際、メンバーの中には元総務の人もいるという。

 とはいえ、もちろん100%課題のない完璧なオフィスというわけでもない。CIO室の石塚大地さんによれば、増床してもなおWeb会議用のスペースは足りないという。

 また、スタジオの機材にも課題が残っていると石塚さん。現状の機材に性能面での過不足を感じており、追加の調達も視野に入っているという。ただ、情シスのメンバーはPCや周辺機器の知識はあるものの、映像制作・配信のプロフェッショナルというわけではない。そして、あまりモノを増やすとそれだけ管理や運用が複雑になり、業務が属人的になる可能性もある。そのため、機材をどう増やすか、どう減らすかに悩んでいる最中という。