近年、富士フイルムの新製品発表会は「X Summit」という名で世界をめぐりながら開催されるのが通例となっている。

 約1年前の2023年5月にはバンコクで開催されて「X-S20」が発表され、同年秋にはストックホルムで「GFX100 II」が発表された。

 今年は2月に東京で開催され、「X100VI」が登場したのは記憶に新しいところ。その時、5月にシドニーで行われると予告があったとおり、2024年5月16日に「X Summit 2024 Sydney」がオンラインで配信されたのである。

 シドニーは日本との時差が1時間なので助かりますな。

●「X-T50」と新標準ズームレンズの登場

 冒頭の話題はX100VI。予約時から品薄で今でも入手困難。公式のフジフイルムモールでも「注文の受付を一時停止」している状況で。米国のストアでも在庫がない状態だ。

 X Summitでは、まず「(X100VIは)当初よりX100Vの2倍の生産体制を組んでいたが、それを上回る状況になっている」というお詫びからはじまった。ちょっと異例だ。

 その後、通常の新製品紹介に。

 オーストラリア在住のフォトグラファーとともにシドニーの街中やスタジオで4つの新製品が発表された。

 最初は「X-T50」。「X-T10」からはじまり、「X-T30」、そしてそのマイナーチェンジにあたる「X-T30 II」と続いたミドルクラスのX-Tシリーズで、その最新モデルになる。X-T40をとばしてX-T50になったのは、「X-T5」に合わせた格好だろう。

 X-T30 IIより少し大きく重くなったが(60g重くなった)、その分、ボディ内手ブレ補正(IBIS)は約7段分。X-T30 IIではボディ内手ブレ補正が搭載されてないだけに、ここは大きな進化点だ。

 画質面でも、X-T5と同じ4020万画素の「X-TRANS CMOS 5 HRセンサー」(名前が長いけど、要するに富士フイルム独自のX-TRANS配列を持つCMOSセンサーの5代目で、高画素のHRと読み出し速度が速い積層型のHSがあるうちのHRってことだ)を採用。

 X-T5と同様、ディープラーニング技術を用いた被写体検出AFを搭載した。こちらも前モデルには未搭載だった機能であり、完全なフルモデルチェンジといっていい。

 でもトピックは、「フィルムシミュレーションダイヤル」を搭載したことだろう。前モデルではドライブモードなどを搭載していたダイヤルがフィルムシミュレーションダイヤルに。

 フィルムシミュレーションは、全部で20種類(ACROSとモノクロのバリエーション含む)。ダイヤルには8つがプリセットされており、さらに3つカスタマイズできるようだ。

 小型軽量でやや廉価なこのシリーズは、動画メインのX-S20とは異なるテイスト位置にいる。写真メインなので背面モニタもバリアングルではなくチルト式だ。

 じゃあ、X-T5とどちらをえらぶか。

 X-T5との大きな違いは、操作系を含むデザインもあるが、フラッシュを内蔵している点や連写速度(メカシャッターの場合、X-T5が最高約15コマ/秒なのに対し、X-T50は最高約5コマ/秒)を上げたい。位置づけの違いが分かる。

 よりカジュアルな写真メインのモデルがX-T50なわけだ。連写が不要ならX-T50を選ぶのはありかと思う。

 同時に発表されたのが、標準ズームレンズ「XF 16-50mm F2.8-4.8 R LM WR」。2月のX Summitで「第5世代Xシリーズ用 新キットレンズ」としてシルエットだけがお披露目されたものだ。

 Xシリーズの標準ズームは長らく「XF 18-55mm F2.8-e R LM OIS」だった。これは初代Xのときに登場したXFマウントでは一番古いズームレンズであり、発売からかなり時間が経っている上に広角端が18mm(35mm版換算28mm相当)と広角に少し弱かった。だから歓迎すべきレンズだろう。

 従来の18-55mmに比べ少し広角側にシフトし、望遠端がF4.8と少し暗くなったものの、約240gとすごく軽い。

 その上、最大撮影倍率は0.3倍とけっこうある。標準ズームレンズとして待たれていたものだ。

●GFX100S IIに加え500mmの超望遠レンズが登場

 残り2つは、ラージフォーマットのGFXシリーズ。ボディの方は、GFX100 IIのコンパクトモデル「GFX100S II」だ。

 2019年に登場したGFX100は、ラージフォーマットの1億画素機。その後2021年にはより小型軽量にし、価格を抑えてフィールドにも気軽に持ち出せる1億画素機として「GFX100S」が登場した。

 今回のモデルは、「GFX100 II」に対するSモデルとなる。

 GFX100 IIが、着脱式のEVF装着時に約1030gなのに対し、GFX 100S IIは約883gと軽く、ボディも一回り小さい。

 また、GFX100 IIとはイメージセンサーが異なる。

 GFX100 IIは信号読み出し速度を上げた「GFX102MP CMOS II HS」なのに対し、GFX100S IIは「GFX 102MP CMOS II」。高速読み出しではないタイプで、GFX100と100Sが搭載していたセンサーの次世代版と考えていいだろう。

 大きな違いはそこだろう。速さのGFX100 IIに対し、従来型のGFX100S IIだ。

 ボディ内手ブレ補正も約8段を実現しており、気軽にフィールドに持ち出せる1億画素ラージフォーマット機になっている。

 4つめは、GFマウントの超望遠レンズ。

 なんと、ラージフォーマットのGFXに500mmの超望遠レンズが投入されるのである。「GF500mmF5.6 R LM OIS WR」だ。

 ラージフォーマット機はレンズ径が大きい分全体が大きく重くなるのは仕方ないのであるが、そのGFXに装着する500mmという超望遠レンズを1375gに抑えてきたのがすごい。

 35mm判換算で約396mm……つまり400mm相当なのだけど、ラージフォーマットの1億画素の解像感で400mm相当なのだからすごい。

 手ブレ補正は約6段分。

 ラージフォーマット機で手持ちの500mm撮影ができるというのはすごい。

●日本ではXF16-50mmのレンズキットがない

 と、X Summitをオンラインで視聴しながら、その意図するところや製品の特徴を考えてみた。

 最後はこれだよね、ということでまとめ画像。

 このとおり、X-T50の価格はボディのみで1399ドル。

 さらに、廉価なXC-15-45キットに加え、XF16-50キットも用意されている……が、それはグローバル版の話。

 日本で発売されるレンズキットは電動ズームで廉価なXC15-45mmと合わせた「XC15-45キット」(市場想定価格は税込26万4000円前後)のみとなる。「XF16-50キット」がないのは残念だ。

 また円安の影響も大きく、2021年発売のX-T30 IIはボディが約11万円だったのに対し、X-T50は24万6400円前後(市場想定価格)と2倍以上になった。X-S20が20万円を超えている状況から予想はされたが、円安の悩ましさである。ちなみに、GFX100S IIの市場想定価格は、84万7000円前後となっている。

 昨今の富士フイルムのカメラは、品不足もさることながら、為替レートが如実に日本での製品価格に反映されており、数年前の感覚では高く感じてしまうのがつらいところだ。