LINEヤフーはなぜ“Switch 2転売禁止”を決めたのか? 担当者に聞いた メルカリ・ラクマと対応が分かれたワケ
ITmedia NEWS6/20(金)7:05

転売ヤーはいなくなれ──任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」を巡って、そんな恨み節がネット上に響いている。現在、抽選販売のみでSwitch 2を売る店舗が多く、需要の高い状況が続いている。そんな中、メルカリや楽天ラクマでは発売日から転売が相次ぎ、批判の声も上がった一方、LINEヤフーのみが“Switch 2出品禁止”の措置を取った。
任天堂は5月、フリーマーケットサービスを運営するメルカリ、LINEヤフー、楽天グループと協力し、Switch 2関連商品の不正出品を防止する取り組みを行うと発表。中でもLINEヤフーは当面の間、Yahoo!オークションとYahoo!フリマでの本体の出品を禁止にした。結果、Switch 2発売日には、メルカリとラクマではSwitch 2の転売を行うユーザーが多く現れた。
任天堂と不正出品防止に関する取り組みを発表したプラットフォーマー3社で、なぜ対応が分かれたのか。Switch 2出品禁止を決めたLINEヤフーに話を聞いた。話し手は同社執行役員でコマースカンパニーリユース統括本部長を務める林啓太さんだ。
●LINEヤフーが“Switch 2出品禁止”を決めたワケ
ある商材を一時的に買い占めることで、市場の供給量がコントロールされ、価格が高騰し、出品者が利益を得る。このような状況に対して、何らかの対策を講じるべく、LINEヤフーでは以前から社内で議論をしていた。その具体策として、出品禁止措置を取ったのが今回のSwitch 2だ。
出品禁止を決めた理由について、林さんは「買い占め行為などでより供給不足が進み、市場が混乱するリスクを回避するため」と説明。「任天堂も、多くの人に商品が行き渡るように抽選販売を決め、本当に欲しい人に行き渡るような仕組みを取っていた。発売日には、供給よりも需要が勝り、欲しくても手に入らない状況になるとも見据えていた」(同)として、任天堂の姿勢に沿った形だ。
LINEヤフーではこれまでも、いくつか商材の出品を禁止にしていた。コロナ禍ではマスクが供給不足になると判断して出品を禁止した他、直近では政府備蓄米も法改正に伴って対応を取った。しかし、災害時でもなければ、法改正も伴わない状況で、ゲーム機を対象に一時的な供給不足への対応を取ったのは、Switch 2が初めてという。
●「本来のリユースサービスから逸脱した売買であると判断」
「モノの価値は需要と供給で決まると思っている。だからこそ、希少性を鑑みて二次流通で高値が付く商材もあれば、目減りして安く買える商材もある。そのバランスの中でこそ、リユースサービスは成立する。基本はプラットフォーム上で自由な売買はあるべき姿だと思っているが、今回のような需要が供給を大きく上回る商材は、通常の売買をすごく混乱させるし、本来のリユースサービスから逸脱した売買であると判断した」
また、林さんは「転売で高値で買わなくてはならず、本当に欲しい人のもとへ届かない状況に乗じて、『空箱だけを売る』など不正出品誘発する可能性もある」と取引の安全面にも言及。「それらの行為は取引の安心安全度を下げるし、もっというとリユースサービスに対する信頼も損なう。個人間取引ということもあり、一時流通とは安全度が異なるため、取引の安全基準を保つためにも不安要素は減らしたい」との考えもあったと明かした。
●そもそも任天堂からの要請は「転売禁止」ではなかったの?
Switch 2の転売が話題になった理由の一つには、任天堂が事前に発表したプレスリリースの影響もあると思われる。もともとプレスリリースでは、不正出品対策で3社と連携をとったと説明していた。ここでいう不正出品とは、悪質な詐欺行為や手元にない商品の出品などの行為を指しており、Switch 2の転売行為を禁止すると明示していたわけではなかった。
しかし、一部では“不正出品=転売行為”と受け取っている人もいた。そのため、発売日当日に出品ページが相次いだことを受け、プラットフォームの対応を非難する声もあった。この点について林さんは「プレスリリースの通りではあるが、この協定は、例えば発売日前にもかかわらず商材を売るような未着詐欺などの不正出品を取り締まるためのものだった」と説明する。
そのため転売禁止自体を協定で結んだわけではなく、ヤフオクなどでの出品禁止措置はあくまでLINEヤフーが自主的に取った判断だ。
「結局、転売行為自体は違法ではないので、強制力を持って転売禁止にできるのかどうかはすごく難しい判断なのではないか。もちろん許容しているわけでもないと思うが、任天堂の意思によって全てを禁止するということは、なかなか難しい局面だと考えている」
●転売対策はなぜ難しいのか? モノを価値を決める基準とは
今回の出品禁止措置についての意思決定は、林さんが行った。メルカリとラクマとは違う対応となったことについて聞くと「正直、すごく難しい課題だ」と林さん。出品を禁止にすることが正しいのか、自由に売買してもらうことこそ“自由な取引”ではないのか。林さんは「どちらが正しいか、言いづらい状況」とし、転売対策の難しさを話す。
「自社のような二次流通事業者の立場からすると当然、自由な取引は前提にあるべき。サービスのバランスをどのように取っていくのかは、各事業者が悩んでいる部分ではないか。何か一律の法律で決まったことがあるわけでもないため、どの解釈も正しいし、正しくないともいえる。そんな中で、それぞれのスタンスを示していく必要がある」
よく言われる“モノを大切に使う”という観点では、「不要になったものが、必要としている人のもとへ渡る」のは、環境負荷などの観点でも重要だ。「これこそがリユースサービスの本来あるべき体験」と林さんは指摘する。
スマートフォンの普及とともに、リユースサービスも今では多くの人の生活の中に浸透している。その環境を逆手に取り「一時的な買い占めによって供給量をコントロールし、より高値で売る」行為は、LINEヤフーでも問題視しており、その対策も検討中。この対策を考える上で一番難しい問題が“安定供給と一時的な希少性”の見定めだ。
例えばSwitch 2の場合、任天堂は今度も安定供給を目指して商品の製造を続けていく。いつかは“店頭でいつでも買える状況”となるため、現在の市場でのSwitch 2の希少性は一時的といえる。これはコロナ禍のマスクの例を見ても同様であり、いつかは安定供給されると予測できる。
一方、在庫数が決まった限定販売を掲げた商材の場合はそうではない。需要が高くなればなるほど、その希少性は上がり、供給が増えない限りは需要が下がる見通しは立てにくい。
このため現状では、市場の混乱を下げるためにSwitch 2のような“安定供給の見通しがつく商材”については世の中への影響度も鑑みて、出品禁止措置など適正な判断をしたいと林さん。一方、在庫数が限られた“安定供給の見通しが立たない商材”には、より慎重な意思決定をしたいとし「受注販売が新たに決まるなど、状況によって対応を考えなければならない。われわれだけで出品禁止の可否を決めるのは難しい」と続ける。
「モノの価値が上がるのか下がるのかは、その場面に直面しないと分からない。買い占めによって二次流通で高値が付くことで転売が課題視されることもある一方、商材によっては逆に値段が下がる可能性もある。“高値になったときだけが問題なのか”といわれると、その判断も簡単に下せない問題だと考えている」
Switch 2の発売から2週間がたったが、LINEヤフーでは出品禁止措置を継続している。











