新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が解除されたことを受けて、飲食店やテーマパークなどへの客足がそれなりに戻ってきた。

 一方で、以前ならもう少しビジネスパーソンが乗っていたであろう電車は、場所にもよるのだろうが以前のような混雑が長時間続くことがやや少なくなっているようだ。テレワーク前提の働き方にシフトしたのか、あるいはマスクなしの生活に戻るまでテレワークを続行しているのか――いずれにしても、オフィスに出向かずに仕事をしている人はいまだに多いようだ。

 さて、在宅でのテレワーク実施者を悩ませるのが、通勤することなく長時間座りっぱなしになることによる「運動不足」と、Web会議時にありがちな「音声トラブル」だ。その両方を一挙に解決できそうなアイテムが、Zepp Health(旧 HUAMI) が「Amazfit(アマズフィット)」ブランドから発売している完全ワイヤレスイヤフォン「Amazfit PowerBuds Pro」だ。11月30日現在、Amazonでは2万3800円(税込み)で販売されている。

 このAmazfit PowerBuds Proは、どのように「運動不足」と「音声トラブル」を解決してくれるのだろうか……?

●完全ワイヤレスイヤフォンに「ヘルスケア機能」を統合

 一見すると、Amazfit PowerBuds Proは、どこにでもありそうなインイヤータイプの完全ワイヤレスイヤフォンである。見た目的には「うどん」とも呼ばれる某社の完全ワイヤレスイヤフォンと“そっくり”だが、シリコン素材のイヤープラグ(イヤーピース)取り付けるカナル型となっている。

 イヤフォンとしての性能はそこそこ良好だ。風切り音なら最大40dB、他の環境ノイズなら最大35dBカットできる「アクティブノイズキャンセリング機能」も備えている。イヤフォンのボタンを長押しすれば、オン/オフ/ヒアスルー(外音取り込み)モードを切り替えられる。左右のイヤフォンのどちらのボタンでも操作できるので、利便性は高い。

 イヤフォンは片方で約6.7g(両方で約13.4g)と非常に軽量だが、単体での音楽の連続再生時間は最長で9時間と長めである。充電ケースを併用すれば、最大30時間の再生が可能だ。ただし、これはアクティブノイズキャンセリングを“オフ”にした場合の駆動時間で、オンにした場合は単体で最長5時間45分、充電ケース併用時で最長19時間となる。

 連続通話時間は、音楽再生時より短くなり、イヤフォン単体で最長3時間半となる。もっとも、スマートフォンでそこまで長電話をする機会は多くないだろう。

 左右のイヤフォンには、共通してマイク×3、近接センサー、加速度計と圧力センサーそ備えている。右のイヤフォンにはPPG心拍数光学センサーも搭載している。要するに、イヤフォンにヘルスケアに関わるセンサーを追加で搭載しているのだ。

 いつものイヤフォンをAmazfit PowerBuds Proに変えるだけで、音楽を楽しみながらランニングやサイクリングのログに加えて心拍数まで記録できる。これが「運動不足」の解決につながるのである。

●センサーを活用して「強制的にリフレッシュ」

 とはいえ、日常的に運動するように意識している人であれば、在宅でのテレワークになったからといって運動不足に陥ることはないはずである。そういう習慣がない人にとって、Amazfit PowerBuds Proが活躍するのは「立ち上がりの促進」である。

 最近のスマートウォッチの多くも「ヘルスケア機能」を搭載している。装着者が長時間動いていないことを検知すると「立って運動してください」と促すものもある。筆者が長年愛用している「Galaxy Gear S3」にもこの機能があり、装着した状態で60分座りっぱなしだと、短い振動が2回来て、ウォッチフェイスに「立ち上がって運動しましょう」というアラートが出てくる。

 しかし、仕事が佳境に入っていると、このアラートを無視してしまいがちだ。しばらくすると表示は消えるので、「罪悪感」をみじんも抱くことはない。もっといえば、家にいる間は手元で時間を見る必要がなく、キーボードを叩くのにじゃまになることもあるため、装着しないことも多い。

 Amazfit PowerBuds Proにも、座りっぱなしを警告するアラート機能を備えている。「音楽を聞く」「オンライン会議に使う」という名目があるため、スマートウォッチと比べれば、仕事中でも外す動機に「乏しい」ので、ある意味で使いやすい。

 しかも、Amazfit PowerBuds Proのアラートは“無視しきれない”こともポイントだ。「頸椎(けいつい)の姿勢リマインダー」機能なるものがあり、40分以上画面を見つめ続けているとリラックスするための音楽が聞こえてくるのだ。

 このリマインダーによる音楽の再生時間は20秒ほど。ずっと音楽が流れている環境であれば、作業を続けられる。しかし、別の音楽が突然再生されると、思考が遮断される。その結果、リラックス音楽の再生中は、ほぼ強制的に「首の運動をするか……」という気分にならざるを得ないのである。

 リマインダーの音楽は、首を動かす方角から聞こえるように再生される。左右上下にゆっくりと、しかし大きめに首を動かしたり伸ばしたりすると、あっという間に20秒ほどだ。こわばっていた首や肩の筋に血流が戻り、リフレッシュできる。ちょっとした息抜きにもなり、仕事のパフォーマンスにも良い影響が出そうだと感じた。

 少し首を動かすと、「もう少ししっかりと動きたい」と思うのが人間というものだ。そこで部屋の中で軽く運動すると、Amazfit PowerBuds Proは心拍数を計測してくれる。心拍数が高くなりすぎると「心拍数が高すぎます」と音声でアラートが発せられるので、「お、いい感じに運動になったな」とある意味での満足感を得られる。そして、さらに運動したくなる。

 “強制的な”首の運動から全身運動につなげられる仕組みが、健康を省みるのに一役買っているという印象だ。

●会話に集中できるノイズキャンセリング機能

 Amazfit PowerBuds Proの専用アプリ「Zepp(ゼップ)」はiOS版とAndroid版しかないが、あくまでもBluetoothイヤフォンなので、PCなどともつなげられる。音の再生だけでなく、マイク機能も利用可能だ。

 今回「レビューのためのWeb会議」に付き合ってくれるような友人や知人もいなかったため、過去に行ったWeb会議のアーカイブを再生してみたが、有線のヘッドセットと変わらない音質で声を聞き取れた。その流れで「Amazon Primeビデオ」を使って映画を再生した所、わずかな遅延を感じた。ただし、実写映画でなければ遅延もあまり気にならないだろう。人の声、BGM、動作音など臨場感のある音が再生され、イヤフォンとしても十分に使える。

 自分の声が相手にきちんと伝わるかも気になる。特に、マイク付きの完全ワイヤレスイヤフォンのマイク性能は、想像以上に“千差万別”だ。カッコつけて意気揚々と電話なりWeb会議なりに臨むと「声が聞き取りにくいんですけど……」と言われることもたまにある。そんなこともあり、電話で問い合わせなどを行うときに、ヘッドセットを使うことを敬遠してしまっていた。

 悲しい過去があるゆえに、正直いってこの製品にもあまり期待していなかった。しかし実際に「ひとりWeb会議」で試してみると想像以上にクリアな音声を残すことができた。強風が吹き荒れる中、窓を開放していたのでイヤフォンにぶつかる風の音は入ってしまったものの、窓の開け閉めの音や目の前の道路を走るクルマの音は全く入っていなかった。これなら、ケーブルを気にせず会話できる上、「相手に声が届いていないのではないか」という不安からも開放されそうである。

 先述の通り、アクティブノイズキャンセリングを有効にした場合の最長通話時間は3時間半ほどである。昼休憩時にイヤフォンを充電しておけば、昼休憩を挟んで7時間近く会議し続けられる。15分間の充電で4分の1ほどバッテリーが回復するので、1時間ほどであれば、複数の会議もこなせるだろう。

●設定はスマホアプリで

 先述の通り、Amazfit PowerBuds Proのさまざまな設定はZeppアプリで行う。例えば「運動不足気味なのでアラートを出す心拍数を下げる」「頸椎の姿勢リマインダーを設定しつつ、リマインドされたときの首回りの運動方法を確認する」「エクササイズ中に重低音のレベルを自動的に上げる」「ランニングを自動検出する」「各ボタンを押した場合に実行するコマンドの設定(ジェスチャー設定)」といった設定が可能だ。

ワイヤレスイヤフォンゆえに、イコライザーなど音に関する設定も行えるが、どちらかというと「Zepp Healthのヘルスケアウェアラブル端末群を管理するアプリ」だと考えたほうがいい。端末は「プロフィール」タブの「マイデバイス」から追加できる。

 一度アプリで設定を済ませると、その設定値はイヤフォン側に保管される。再度PCに接続し直してテレワークに活用しよう。

 残念ながら、Amazfit PowerBuds Proはマルチペアリングや複数台の同時接続機能に対応していない。そのため、別のデバイスで使う場合は「つなぎ直し」ということになるが、充電ケースを開けて、背面のペアリングボタンを3秒長押しするだけでペアリングモードにできるため、つなぎ直す作業はそれほど苦にならない。

 「PC用」「スマホ用」と別々にイヤフォンを用意するよりは楽なことは間違いない。価格以上のメリットを感じられると思う。

●「運動しない人」にはピッタリ 詰めの甘さを感じる場面も

 Zeppアプリに話を戻そう。このアプリは全体的に分かりやすいユーザーインタフェース(UI)を備える。しかし、Amazfit PowerBuds Proには心拍センサーがあるのに、ホーム画面で心拍数の「モニタリングを開始」しようとしても、「この測定で利用可能な装置がありません」と表示されたり、ワークアウトを開始しても、1〜2分では「短すぎ」て記録できないなど、詰めの甘さを感じる場面もあった。

 また、ランニングは自動検出するのに、ウォーキングにはその機能がないのは、普段から運動しない人には少しハードルが高いようにも思える。

 とはいえ、Zepp Healthはぽっと出のメーカーではない。Xiaomi(シャオミ)のパートナー企業として「Mi Band」を供給してきた実績がある。今後、ソフトウェアの更新で使い勝手に改良を加えてくれるだろう……と期待している。

 いずれにせよ本製品を数日使ってみて感じたのは、(筆者のような)“全く”運動しない人、体を動かすことに無頓着な人にこそ使ってもらいたいものだということ。出勤せずに仕事をしつつ、体を動かす習慣を身につける第一歩になるアイテムであるに違いない。