「OMEN Transcend 16」は、日本HPのゲーミングブランド「OMEN」シリーズから登場した、薄型の16型プレミアムゲーミングノートPCだ。
約2.17kg、約19.9mmのスリムなボディーに最新の高性能CPUとGPU、16型Mini LEDディスプレイを搭載している。さらに多彩なイルミネーション演出も備えた豪華な内容になっている。
今回はスペックが異なる2モデルの中から、上位にあたる「OMEN Transcend 16-u0012TX スプリームモデル」の性能や使い勝手を検証していこう。
●洗練されたビジュアルのホワイトメタルボディー
本機の特徴の1つが、スリムで洗練されたビジュアルだ。「セラミックホワイト」という名の通り、セラミックを連想させるマットなホワイトは、新鮮なインパクトがある。
天板にはAED(アニオン電着塗装)加工がされている。指紋が付きにくく、引っかき傷にも強い効果があるというが、実際に触ってみてもそれは確かに実感できる。手当たりがソフトでありながらベトつかず滑らかで、非常に高級感のある仕上がりだ。
ボディーの具体的なサイズは、約356.5×269×19.9mm(突起部を除く)で、重量は約2.17kgだ。底部奥側の吸気口部分が張り出しており、吸気口部を含めた実測値だと22〜24mm(ゴム足まで含めると最大で28mm程度)ある。
●キーボードイルミネーションも搭載
ゲーミングPCらしい発光ギミックもある。キーボードには、ゲームで多用されるWASDキーを含む4つのゾーンそれぞれに違う色を指定できる「4ゾーンRGB LEDバックライト」を搭載している。
WASDキーは内部の構造などが透けて見える透明素材を利用しているため、発光時はかなり派手なビジュアルになる。なお、キーボードはテンキーレスだ。デスクトップPCのキーボードからテンキーを省いたようなレイアウトを採用しており、配置に余裕があってとても使いやすい。
26キーまで複数キーの同時押しを認識できる「26キーロールオーバー」、そして複数キー同時押し時にも誤入力の不安がない「アンチゴースト」と単体のゲーミングキーボードの定番機能も装備する。
●インテル最新の24コアCPU&NVIDIA最新GPUを搭載
基本スペックは最新仕様だ。CPUはインテル最新世代のCore i9-13900HXを採用している。合計24コア32スレッド、最大周波数5.4GHzという強烈なスペックを誇る。
GPUもNVIDIA最新世代のGeForce RTX 4070 Laptop GPU(8GB)を搭載している。こちらも新アーキテクチャ(Ada Lovelace)と4nmプロセスルールの採用によって先代から電力効率が大幅アップしており、強力なゲーミング体験、高いAI処理性能を持つ。
ちなみにGeForce RTX 4070 Laptop GPUは、通常はCPU内蔵GPU経由で画面と接続されるが、画面と直結する「ディスクリートGPUモード」も可能だ。ゲームによってはパフォーマンスが上がることがある。
メモリはPC5-44800S(DDR5-5600)を32GB(16GB×2)搭載している。ストレージにはPCI Express 4.0対応のSSDを2TB搭載と、ゲーミングPCとして文句のない内容だ。
●高速広色域のMini LEDディスプレイを搭載
画面は16型のMini LEDディスプレイを搭載している。表示解像度は2560×1600ピクセル(アスペクト比は16:10)で、照明などが映り込みにくいノングレア仕様だ。
Mini LEDディスプレイは、液晶ディスプレイのバックライトに極小サイズのLEDを使い、細かいゾーン単位で輝度制御(ローカルディミング)を行うことで、完全な黒の表現や繊細な階調表現を可能にしている。
本製品のMini LEDディスプレイの最大輝度は1180nitで、DCI-P3 100%の広色域をカバーしている。VESAが定めるHDR向けディスプレイの基準の中でも、上位の「DisplayHDR 1000」にも準拠している。
さらに、リフレッシュレートは通常の4倍の240Hzに対応し、応答速度も5msと高速で残像感のない滑らかな表示が可能だ。FPSや格闘タイトルなど、一瞬の動き、反応の見極めが勝負を分けるゲームも有利な条件でプレイできる。
●先進のインタフェースと、良質なBang & Olufsenサウンド
通信機能は、1000BASE-T対応有線LAN、Wi-Fi 6E対応無線LAN、Bluetooth 5.3を標準装備する。
USB端子は、USB Type-C(Thunderbolt 4)とUSB Standard-A(USB 3.2 Gen 1)を2基ずつ装備する。USB Type-C端子は、USB PD(Power Delivery)にも対応している。
画面の上には約207万画素のWebカメラとアレイマイクを装備している。マイク/スピーカーのノイズキャンセリング機能も備えている。
サウンドシステムは、世界的なオーディオブランドであるBang & Olufsenとの共同開発しており、スピーカーの音質も極めて良好だ。低音もしっかり効いた厚みのあるサウンドが再現され、一般的なノートPCとは明らかにレベルが違う。
●ワイヤレスゲーミングヘッドセットを同梱
HyperXブランドのゲーミングヘッドセット「HyperX Cloud II Core Wireless」を標準で付属するのも見逃せない。
このヘッドセットは53mmの大口径ドライバーを搭載し、高音から低音までクリアでパワフルなサウンドを再生できる。サウンドサラウンド技術「DTS Headphone:X空間オーディオ」にも対応する。絶妙な柔らかさの合成革製のイヤークッションを装備しており、装着感も良好だ。
接続は2.4GHzの電波を利用したワイヤレスだ。OMEN Transcend 16にはあらかじめ本体に通信モジュールを内蔵しているため、USBドングルやBluetoothのようなペアリング作業が不要で、ヘッドセットの電源を入れればすぐに接続されて利用できる。通常のUSBドングルも付属しているため、本製品以外のPCやPlayStation 5などでも問題なく使える。
●ベンチマークテストでハイレベルなゲーム体験を実証
続いてベンチマークテストの結果を掲載する。特に言及がない限り、OMEN Gaming Hubで選択できる電源モードは「パフォーマンス」、Windows 11の電源設定は「最適なパフォーマンス」を選択している。参考として、Core i5-11400H、GeForce RTX 3050 Laptop GPU(4GB)を搭載した2021年世代のゲーミングノートPCのスコアも記載した。
結果はご覧の通りで、どのテストでも比較対象に圧勝している。実際のゲームベースのテストでも、FINAL FANTASY XIV:暁月のフィナーレベンチマークでは「2560×1600ドット」の最高品質で最高評価。サイバーパンク2077では、「2560×16000ドット」の高画質設定で平均フレームレートが80fps超、HDR、レイトレーシング(低)を有効にした状態でも平均約70fpsとハイレベルなゲーミング体験ができることを実証している。
●放熱設計も合理的である
放熱設計も優秀だ。ボディーはヒンジからキーボード中央を中心に発熱があるが、ゲーム時に手がよく触れるWASDキー周辺は比較的低い温度に抑えられている。パームレストも右側が少しじんわりするかなといった程度だが、右手はマウス操作をすることが多いだろう。後方と左右側面、三方向へ排気するが、右側面の熱風はマウスを操作していてもほとんど気にならない。
動作音も「最適」設定ならば、高負荷時もマイルドな動作音だ。「パフォーマンス」でも許容範囲だろう。
「ECO」については、高負荷をかけ続けた場合に到達したピークの動作音は「最適」とあまり変わらなかったが、できるだけ低く抑えて推移するため体感的にはかなり静音効果があった
●ラグジュアリーな体験ができる高級ゲーミングノート
今回評価機としたスプリームモデルの直販価格は、52万5800円(税込)だ。ベンチマークのスコアやゲームのフレームレートを基準にしたコストパフォーマンスならもっと良い選択肢があるだろうが、本製品の魅力はパフォーマンスだけではないプレミアムな体験、付加価値にある。
ボディーのデザインやビルドクオリティー、イルミネーション演出、HDR表現力の高いMini LEDディスプレイ、高音質サウンドシステムなど、他の製品では得られないラグジュアリーな体験ができる。こうした部分が刺さるのであれば、良い選択肢になるだろう。
なお、ラインアップには「パフォーマンスモデル」もある。CPUやGPUのグレードが下がり、Mini LEDディスプレイでもなくなるが、同じボディーで31万6800円(税込み)と買いやすい価格になっている。こちらも合わせて検討するとよいだろう。