Googleが開発したクラウドネイティブOS「ChromeOS」を搭載するノートPC「Chromebook」は、2024年5月に登場から13周年を迎える。思ったよりも登場から時間が経過していることに驚く。

 日本では、「GIGAスクール構想」における学習用端末として広く知られることになったChromebookだが、最近では企業での導入事例も聞こえてくるようになった。しかし、Windows PCやMacと比べると、Chromebookには「安いがスペックが低い」という印象がつきまとう。

 仕組み上、ChromeOSは他のOSと比べて最低ハードウェア要件が緩い。そのため、低スペックな構成でも基本操作は快適なのだが、画像編集やビデオ(Web)会議アプリといった比較的負荷の大きい機能をよく使うケースでは、快適とは言いがたい状態になってしまうこともある。ゆえに、企業における業務用端末を選定する際に、パフォーマンス的側面からChromebookを除外してしまうケースも見受けられる。

 従来のChromebookにも高性能モデルは存在するのだが、大きな存在感を放つ状況にはない。昨今、オンデバイスでのAI(人工知能)処理が注目を集め、PCへのNPU(推論プロセッサ)搭載も規定路線となってきた中、今後はChromebookにも一定の高い性能が求められる状況にある。

 そんな中、Googleが2023年10月2日(米国太平洋夏時間)、Chromebookの新たなカテゴリーとして「Chromebook Plus」を発表した。

 Chromebook Plusは「パワフルな仕様、生産性と創造性を高める高度なアプリを備えた新しいカテゴリの Chromebook」をうたっており、従来のChromebookとは“ひと味”違うことをアピールしている。

 前置きが長くなったが、この記事ではASUS JAPANが発売した「ASUS Chromebook Plus CX34」(実売価格7万5000円前後)と、「ASUS Chromebook Plus CM34 Flip」(実売価格8万円前後から)を通して、その特徴をチェックしていく。果たして、どこがどう“Plus”になったのだろうか……?

●そもそも「Chromebook Plus」の定義は?

 “パワフル”をうたっているだけあって、Chromebook Plusには以下の要件(ベースライン)が定められている。

・CPU:第12世代Core i3以降/Ryzen 3 7000シリーズ以降

・メモリ:8GB以上

・ストレージ:128GB以上

・Webカメラ:1080p(約207万画素)以上で、時間的ノイズ除去リダクションに対応

・ディスプレイ:フルHD(1920×1080ピクセル)以上のIPS液晶

 Chromebookとして見ると、結構ハイスペックなモデルといえる。これであれば、スペック面でChromebookを諦めていた企業ユーザーはもちろん、個人のパワーユーザーでも満足の行くパフォーマンスを発揮できるだろう。

●今回レビューするChromebook Plusの特徴は?

 記事掲載時点において、Chromebook PlusはAcer、ASUSTeK Computer、HP、Lenovoの4社からリリースされている。

 先述の通り、今回はASUS JAPANからASUS Chromebook Plus CX34とASUS Chromebook Plus CM34 Flipの2モデルを借用できたので、それぞれの特徴を簡単にチェックしていこう。

CX34:丈夫さ重視でCore i3プロセッサ搭載

 ASUS Chromebook Plus CX34 (以下「CX34」)は、第12世代Core i3プロセッサ(開発コード名:Alder Lake)を搭載するクラムシェルタイプの14型Chromebook Plusだ。ボディーカラーはホワイトのみとなる。

 CX34の主なスペックは以下の通りだ。

・CPU:Intel Core i3-1215U(Pコア2基4スレッド+Eコア4基4スレッド)

・RAM:8GB LPDDR5

・ストレージ:128G UFS

・ディスプレイ:14型フルHD液晶(非光沢、タッチ操作対応)

・Webカメラ:1080p撮影対応(プライバシーシャッター付き)

・外部ポート:USB 3.2 Gen 1 Standard-A×2、USB 3.2 Gen 1 Type-C×2(※1)、HDMI出力、3.5mmイヤフォン/マイクコンボ端子

・サイズ:約32.64(幅)×21.43(奥行き)×1.87(厚さ)cm

・重さ:約1.44kg

(※1)USB PD(Power Delivery)規格の電源入力と、DisplayPort Alternate Mode準拠の映像出力にも対応

 ボディーは「MIL-STD-810H(MIL規格)」に定める耐衝撃性能を確保しており、サイズと重量も相まって外出先に持ち出しやすいことは心強い。デザインも非常にシンプルなので、コンシューマーユーザだけでなく、企業ユーザーにも“一押し”だ。

CM34 Flip:画面を反転してタブレットライクに使えるRyzen 3搭載2in1モデル

 もう1つのASUS Chromebook CM34 Flip(以下「CM34 Flip」)は、Ryzen 7020Cシリーズを搭載するコンバーティブル式の2in1タイプの14型Chromebook Plusだ。ボディーカラーはジンク(亜鉛:明るめのグレー)とポンダーブルーの2種類と、先に紹介したCX34と比べるとコンシューマー色が強い(日本ではジンクのみ用意)。

 今回レビューするのは「Ryzen 5 7520C」を搭載する上位モデルで、主なスペックは以下の通りだ。

・APU(GPU統合型CPU):Ryzen 5 7520C(4コア8スレッド)

・メモリ:8GB LPDDR5

・ストレージ:128G SSD(PCI Express 3.0接続)

・Webカメラ:1080p撮影対応(プライバシーシャッター付き)

・ディスプレイ:1920×1200ピクセル液晶(光沢加工、タッチ操作/ペン入力対応)

・外部ポート:USB 3.2 Gen 1 Standard-A、USB 3.2 Gen 1 Type-C×2(※1)、HDMI出力、3.5mmイヤフォン/マイクコンボ端子、microSDメモリーカードスロット

・サイズ:約31.96(幅)cm×23.53(奥行き) ×2.07(厚さ)cm

・重さ:約1.85kg

 こちらは重量がやや重めなため、常時持ち歩くのは少し厳しい。一方で、CX34とは異なりタブレットライクに使える上、ペン入力にも対応するので、用途次第では一層便利に使える。

 日本向けモデルのSSD容量は128GBのみとなるが、海外では最大512GBのSSDを備えるモデルも用意されている。クラウドストレージ(Google ドライブ)の利用を前提とするChromebookだが、米国では「ローカルストレージの容量をもっと大きくしてほしい」というニーズが強いと聞き及んでいるが、大容量ストレージのオプションが用意されていることも。従来のChromebookにはない特色といえる。

 次のページではChromebook Plus“ならでは”の機能と、CX34とCM34 Flipのパフォーマンスをチェックしていく。

●Chromebook Plus“ならでは”の機能をチェック!

 Chromebook Plusは、一般的なChromebookよりもハイスペックだ。そのことを生かして、通常のChromebookでは非対応とされている以下の機能を利用できる。

「消しゴムマジック」の利用

 ChromeOSでは、Googleのフォトアルバム「Google フォト」を利用できる。

 Google フォトといえば、同社のPixelスマートフォンや「Google One」契約者が利用できる「消しゴムマジック(Magic Eraser)」という機能が有名だが、Chromebook Plusのユーザーもアルバムアプリから消しゴムマジックを利用できる。

 試しに、海岸に打ち上がっていたゴミが映り込んだ写真を用意して消しゴムマジック機能を使ってみよう。使い方はとても簡単で、Google フォトで写真開いたら画像編集モードに切り替えて、「消しゴムマジック」をクリックすればいい。

 そうすると、写真データの解析が行われた後、消したい物をブラシで塗ったり、囲えるようになるので海岸に打ち上げられたゴミを囲むと、しっかりと消去された。

 次は少し意地悪をして、写真に大きく写り込んだ人を消しゴムマジックで指定してみた。すると、しっかりと人が“消えてしまった”。よく目をこらして見ると、波打ち際に若干の違和感があるものの、言われないと分からないレベルだ。

 Chromebook Plusなら、無料で消しゴムマジックを使える――これだけでも、人によっては選ぶ理由になりそうだ

ビデオ会議の品質改善

 先述の通り、Chromebook Plusは一定水準以上のCPUやWebカメラを搭載しなければならない。そのことを生かして、Chromebook PlusではAIベースのビデオ会議の品質改善機能が標準装備される。具体的には、以下の機能を利用できる。

・音声のノイズリダクション

・カメラ映像の明るさのリアルタイム補正

・カメラ映像のリアルタイム背景ぼかし

 この機能は自社の「Google Meet」だけでなく、「Zoom」や「Microsoft Teams」といったサードパーティー製ビデオ会議サービス(アプリ)からでも利用可能だ。画面下方に表示される「アプリシェルフ」から簡単に設定できるので、ぜひ活用したい。

クリエイター向けアプリの快適な利用

 Chromebookは「Google Play」を通してAndroid OS向けのアプリを利用できる。しかし、CPU/GPUの処理能力やメモリ容量の兼ね合いから、アプリによっては快適に動作するとは言いがたい面もある。特にクリエイター向けアプリは負荷が大きく、使えても“便利”からはほど遠い印象も強い。

 その点、Chromebook Plusはクリエイター向けアプリが快適に動作すると、Googleは強調している。確かに、一般的なChromebookでは荷が重いアプリでも、今回試したChromebook Plusならサクサク動作したので、その点は間違いない。

 ちなみに、Chromebook Plusにはアドビの「Photoshop(Web版)」や「Adobe Expressアプリ」の有料プランを3カ月無料で利用できる特典と、LumaTouchの動画編集アプリ「LumaFusion」を25%オフ(3960円→2970円)で購入できる特典が付帯する。

 今まで「クリエイターが使うPC」として選択肢にも挙がらなかったChromebookだが、用途次第ではあるものの、Chromebook Plusなら選択肢に加えても良さそうだ。

今後実装予定の機能も

 Chromebook Plusでは、今後(2024年中に)実装される予定の付加機能もある。

 その一番の目玉が、GoogleのAI機能の統合だ。昨今Windows 10/11において「Copilot in Windows」が実装され話題になったが、Chromebook Plusでも同様の機能が実装される。

 他にも、今見ている「YouTube」の動画の概要を出力する機能や、生成AIで画像を出力する機能も実装されるという。画像の出力については、壁紙やバーチャル背景、プレゼンテーション資料など使いでのある機能となりそうだ。

●従来のChromebookと比べるとパフォーマンスは良好

 テストアプリが充実しているWindows PCと比べると、Chromebookの実力を試せるベンチマークテストの選択肢は少ない。今回は、その数少ないテストの1つで、Googleが公開している「Octane 2.0」を使ってChromebook Plusの実力をチェックしてみることにしよう。

 Octane 2.0はWebブラウザで利用できる「JavaScript」の実行パフォーマンスをチェックするものだが、JavaScriptの実行エンジンの性能はもちろん、CPUやGPUのパフォーマンスもスコアを左右する。

 CX34とCM34 Flipにおける総合スコアは以下の通りだ。

・CX34:8万3562ポイント

・CM34 Flip:5万7478ポイント

 スコア差は約1.5倍となった。CX34に搭載されているCore i3-1215Uと、CM34 Flipが搭載するRyzen 5 7520Cのコア数や最大クロック数を踏まえて考えると、それほど違和感のない結果ではある。一般的なChromebookよりも良いスコアであることも言うまでもない。

 Chromebook Plusは「パワフルなChromebook」といえど、他OSと違ってOS自体の動作が非常に軽快だ。そのため、「こちらの方がベンチマークテストスコアが良いから」という選び方よりも、Chromebook Plusの中から、自分が望む機能や特徴を備えたモデルを選ぶと良いだろう。

 Chromebook Plusはパフォーマンスの担保だけでなく、OSの機能がさらに強化されることで、より幅広い用途で利用できて、かつ他OSが搭載されたPCと比べてお財布に優しい優秀なPCとして台頭するのではないか、と期待している。今後が楽しみだ。