6月から始まる所得税と住民税の4万円の定額減税を巡り、支給の実務を担う岩手県内の市町村や企業が「手探り状態」で準備に当たっている。対象者の絞り込みや支給業務が複雑で、重い事務負担に戸惑う経理担当者も。岸田文雄首相の主導で決まった物価高対策の目玉だが、手間がかかる割には対象者に所得増の実感が伝わりにくいとして、経済効果を疑問視する声もある。

 盛岡市紺屋町の市勤労福祉会館で、21日午前に開かれた企業向け説明会。「減税額を控除しきれない場合はどうなるのか」「基準日に休職している職員への対応は」。経理担当者ら約50人が出席し、税務署職員への質問が相次いだ。会場には個別の質疑応答を待つ長い列ができた。

 市内の老人福祉施設に勤める50代女性は「制度が複雑。6月は賞与の時期で事務も増えるし、チェックに緊張感がある。政府は減税を強調するけれど、税務署だって説明会を開かなければならないし、誰が喜ぶ減税なのか」と嘆息した。