建設現場の事故発生リスク低減を目指して 法政大・今井龍一教授らがスマホなどで作業員のヒヤリハット動作や疲労度を可視化
Digital Life6/16(月)11:00

建設現場の事故発生リスク低減を目指して 法政大・今井龍一教授らがスマホなどで作業員のヒヤリハット動作や疲労度を可視化
建設業における労働災害発生状況は、年々減少傾向にあるものの、依然として全産業の中で死亡者数は多い。高所での作業や重機の使用などを伴う危険性の高さが起因しているが、事故要因として墜落・転落、転倒の割合が高く、ヒヤリハットの防止や疲労蓄積度の管理が求められている。そこで、法政大学の今井龍一教授らは建設現場でも常時計測が可能なウェアラブルセンサを活用し、事故発生リスク低減を視野に入れた研究に取り組んでいる。この研究に関する論文は、デジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。
建設業の死亡災害は、令和3年までの過去50年間でみると9分の1ほど減少している。それでも、いまだに年間300人近くの方が亡くなっており、その約4割が墜落・転落災害となっている。「1件の重大な事故の背景には29件の軽微な事故、その背景には300件の事故には至らない危険な状況(ヒヤリハット)がある」というのは、労働災害の経験則であるハインリッヒの法則だが、今井教授らは、その防止に寄与すべく、日常生活にも溶け込むウェアラブルセンサを用いて、つまずきやふらつきといったヒヤリハット動作の検出や疲労度の推定可能性を検証した。
今回の実験で使用したウェアラブルセンサは3種類。1つ目は、運動用やプレーの解析に用いられるスポーツセンシングデバイス「xG-1」、2つ目は、バイタルの計測も可能なスマートウォッチ「Apple Watch Ultra」、そして3つ目は、3軸ジャイロ、加速度センサーなどを搭載している「iPhone 12 Pro」。被験者は20代の男子学生8名で、下記図のようにそれぞれ装着し、ヒヤリハット動作と作業動作におけるデータを取得していった。
研究の結果、ズボンのポケットに入れたスマートフォン「iPhone 12 Pro」で取得したデータに、機械学習モデルの「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」を適用すると、F値0.95(F値は1に近いほど精度が高い)の精度でヒヤリハット動作を検出することがわかったという。身近な存在でもあるスマートフォンは、実際の建設現場でも実用性が高く、労働災害事故の予防に役立てそうだ。
専用ベストで身体背部に装着し、運動時の動作データを高精度で取得できるデバイス「xG-1」は、疲労度の可視化に有効性を示したという。階段を下りる動作や運搬する動作など、労力が必要な動作ほど、疲労後の身体の揺れが顕著に大きくなることがわかったといい、建設作業員の業務中の疲労度を推定できる可能性があるという。今井教授らは「疲労度を推定することで、適切な現場管理が可能になり、疲労しやすい作業員の配置などを配慮することで、事故を未然に予防できる」と期待を込める。
今回の研究では、20代の学生たちを被験者としたため、実運用においては建設作業員の多様な年齢層、体格などの個人差を考慮する必要性がある。かつ、模擬的にヒヤリハット動作や疲労状態を再現して検証実験を実施したため、今後はさまざまな現場状況と照らし合わせて活用可能性の解像度を上げていくことが重要になっていくだろう。この研究成果の詳細は、デジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開中。











