安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

「編集長が聞く!」

【まとめ】

・自公の協力体制で都民ファーストから第一党の奪還目指す。

・五輪開催是非は争点にならない。

・都ファにも自民にも風吹かず。自民候補は地力で勝負。

 

都議会選の告示まで1週間余り。前回の選挙では小池都知事率いる「都民ファーストの会」が第一党に躍進した。一方自民党は、127議席中過去最低の23議席に留まるなど、厳しい結果となった。

今回の都議選ではどのようなメッセージを有権者に訴え、都議選へ臨むのか。自民党東京都連会長を務める鴨下一郎衆議院議員に話を聞いた。

■都議選の戦略

安倍: 都議選はどのような戦略で臨むか?

鴨下氏: 前回の選挙が非常に厳しい結果でしたから、シンプルに言えば議席の奪還です。都議会で前回の選挙で苦杯をなめた人たちはこの4年間有権者とコミュニケーションを取りながら頑張ってきましたので、1番はとにかく議席の奪還です。

そのためにそれぞれの政策を訴えるということですが、今回の選挙はコロナ禍での選挙なので、コロナで苦しんでいる方々が1日も早く様々な意味で回復できるようにしなければならない。1つはワクチンの推進を都議会としても言っていくこと、もう一つはこの1年半の間に経済的にダメージを受けた人たち、個人事業主、中小、小規模の事業をやっている人も含めて、一日も早く元の生活に戻れるように都の財政を駆使して、行政を動かしていく、というのも今回の選挙で議席を奪還する意味です。

安倍: 獲得議席目標は?

鴨下氏: 前回は結果的に23議席にまで減ったので、今回は自民党と公明党合わせて過半数を取って、都議会の中でのイニシアチブを取り戻すことを目指しています。

安倍: 前回の選挙では公明党と都民ファーストの会が共に選挙を戦っている。ところが、今回は自民党と公明党が選挙協力を行っている。

鴨下氏: 公明党の事は私が語ることではありませんが、色々お話を伺っていると、(公明党は)この4年間の都民ファーストの議会運営、政策の実現能力について甚だ疑問があった。公明党としても伝統的には自公で都政を回してきたので、それに復帰したということだと思います。

安倍: 都民ファーストの会の議会運営については、自民党も同じ見方なのか。

鴨下氏: 自民党はもっと厳しい見方をしています。都民ファーストの会の議員一人一人は能力のある人がいるのでしょうが、政治というのは単なる机上の政策ではなく、都の経済を実際に回している美容院や飲食店などの各団体と、本当に密に、わがこととして政治に対して何をしたら良いか声を聞いて回る必要があります。これは自民党の1番得意なところですから、その点では都民ファーストは十分にできていなかったと言う評価です。

安倍: この4年、都民ファーストと自公は、とりわけ角を突き合わせてきた感じでもなかった。是々非々で、小池都政に一定の評価を与えていたように見えていた。

鴨下氏: 当初小池都政と都民ファーストはほぼ一体のものでしたが、小池さんは都知事として都民のために具体的な政策をやらないといけないわけですから、自民党や公明党の意見も聞いて、各政党とバランス良くやらないといけない。都民ファーストだけで都政が運営できるかというと、現実的にできなかったということだと思う。最終的に都民ファーストと都知事の間で多少の距離感が出てきているのではないか。

安倍: 都民ファーストから離脱する議員も相次いでいる。中には「荒木さんによる専横が行われている」と実名を挙げながら党に対して厳しい批判を行った議員もいたりして、仲間割れのような印象を受ける。

鴨下氏: 都民ファーストは組織としてまだできてから4年しか経っていないので、組織を動かしていくことにはまだ熟練していないということだと思います。ただ、都民にとってみれば勉強期間などはなくて、即戦力でフルに活動してもらいたいという点では期待からかけ離れていたのかなと思います。

安倍: 仮に自公で過半数を獲得したら、都民ファーストとの関係はどうしていくのか。

鴨下氏: 自民党は都知事に対して是々非々で、予算案も賛成しましたし、前回の都知事選挙には対抗馬も立てずに、都民のためになることは我々もサポートしてきました。これは変わらない。ただ、都民ファーストと自民党は今まで対立してきましたから、自公が過半数を獲得したときに都民ファーストがどれくらいの議席数を獲得して、どのように動くのかは都知事との間の関係性であって、我々がとやかく言う話ではない。

安倍: 小池知事自身が立場をはっきりさせておらず、「都民ファーストを応援する」の一言もない。

鴨下氏: 小池さんも非常に洞察力のある人ですから、選挙後にどのような議会体制になるのかはある程度見通して、その上で都民のため、都政のためにはどこに軸足を置くべきか考えながら今回の選挙に臨むのではないでしょうか。

■オリンピックについて

安倍: 小池知事がオリンピックに対してどのような姿勢をとるのか注目されていたが、開催の立場を取るということなのか。

鴨下氏: 都議会選挙は7月4日が投票日ですから、オリンピックまで残すところ3週間弱ですよね。それを考えると、オリンピックをやるやらないというのが都議会議員選挙の争点になるとは考えていません。菅さんの言葉を借りれば、いかに「安心安全」で、科学と医学の粋を集めて感染者が増えないようなオリンピックを成功させるのかという趣旨の中で選挙をやるべきだと思っているので、やるやらないと言うのは最早争点ではないと思います。

オリンピックの開催を前提に、観客を入れるのか無観客でやるのか、様々なゲストの数を縮小するのか、このようなことは感染が拡大基調なのか、それともある程度安定してきているのかというバランスの中でやればいいわけです。

安倍: 海外から選手含め様々なゲストがやってきて、市民と接触する機会もある中で、感染拡大は避けられないと思っている有権者も多いと思うが?

鴨下氏: 専門家の見解もそれぞれだが、現在野球やサッカーの試合や、各地方でイベントも行われています。日常的な他のイベントと比べても、オリンピックはさほど大きいイベントではないと思います。プロ野球だって、1試合で2万人入れてやる場合、6試合やれば10万人以上入るんですよね。それを5日間やれば、それだけで50万人になる。オリンピックは1番多い日で22万人入ると言われていて、規模感で言えば我々が日常様々なイベントをこなしているのとそんなに変わらないので、きちんとそこを管理すれば現在行われているスポーツイベントの1つとして開催できると思います。

多少の特殊事情として、海外から大勢の方がいらっしゃるけれども、選手はほとんどワクチンを接種していますから、選手から日本人に移ることはほとんどないと思う。

野球を見ていても、昨日の試合もすごく盛り上がっていたじゃないですか。相当な人数が入っているし、つい最近も総合格闘技の試合をドームでやっていましたけど、それもすごく人が入っていてそこでクラスターが出たと言う話は今のところ聞こえてきていません。これらのスポーツイベントができてオリンピックができないと言う理由は、どこにあるのかと私は思います。

安倍: こうしたことを都知事が含めて政治家がもう少し丁寧に伝えることで、国民も安心できるのではないか。

鴨下氏: 規模感で考えれば、オリンピックは特別なことではない。オリンピックによって人流が動くという話もありますが、それは野球やサッカーでも日本中から見に来ている人だっていますし、オリンピックだけ特殊に危険なイベントと位置づけるのは為にする議論だと思います。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

■コロナ対策

安倍: コロナ対策では給付金の配布が遅れているという声もあるし、都の要請を受け入れずにアルコールを提供する飲食店も増えている。自粛を強いられている業界からは都政に対して不満も出ているが、自民党としてはどのような戦略で対応していくのか。

鴨下氏: コロナの感染が拡大している時には皆我慢しなければいけないので、飲食店の皆さんにも自粛をしてもらわなければならない。まずはできるだけ早く感染を抑制することが1番ですが、今のように漫然と緊急事態宣言やまん延防止(等重点措置)をやっていれば、経営上我慢できなくなってお酒を出したり、20時以降も営業したりするお店が出てくるのは必然だと思います。でもそれでは我慢をしている人たちは割を食うわけです。割を食う人たちが割を食わないように、実際には支援金給付のスピードを上げる努力は東京都にもっとしてもらいたいと思います。ただ、一日4〜6万円くらいもらっても一日100万円売り上げる店からすれば焼け石に水になってしまう。ここはあと一息我慢の時なので、皆さんもうちょっと堪えてもらって、その間にワクチンを徹底的に早く普及して皆で乗り越えてもらうことを都知事だとか総理大臣などのリーダーにもっと熱く語ってもらいたい気持ちはあります。

安倍: 自衛隊が設置した大規模接種センターでは6〜7割の予約枠が余っていて、64歳以下の接種も認めているが、若い人に接種券はまだ届いていない。大企業では職域接種が認められてきているが、中小企業や自営業の人は年齢が若いとなかなかワクチンを打つことができず、フラストレーションが溜まっている。

鴨下氏: 自民党の都連の中で、各区の区議会議員から「行政に対して強く働きかけてくれ」と言う声が上がっています。現在高齢者の方では30%くらいワクチンが届き始めたので、同時進行で若い人たちにも接種券は早く配布して、できるだけ早く現役世代がワクチンを打てるような体制を作ることを自民党都連所属の地方議員、特に区議会や市議会の先生たちにみんなで行政に働きかけようと言う動きはしています。

行政もサボっているわけではないが、判断が遅い。ある程度高齢者が動き始めたら、64歳以下にも配布し始める。自衛隊の大規模接種会場でやることも必要だが、薬のデリバリーさえできれば個人の開業医の先生でも十分にワクチンを打つことができる。自民党のワクチン対策プロジェクトチームの座長としては、そのような工夫について役所の判断が少し遅いと、甚だ不満なところがあります。

安倍: ワクチンの接種券がなくても300円徴収して接種を行い、接種券が届いた時に自治体に届け出れば300円が返ってくると言うシステムを取った自治体があると聞いている。

鴨下氏: そのようなデポジットのシステムは良いと思います。接種券を事後で届けるというのは、普通の人であればめんどくさいと思うかもしれないが、300円というデポジットがあれば届けようというインセンティブにはなると思います。

ワクチンというのは、どなたにでも打つのがいいわけだから、ワクチンが潤沢に届き始めた今では打つ意欲のある人たちの妨げになるものは全て取っ払った方が良いです。最初は打つ人よりもワクチンの数が圧倒的に少なかったので、ある程度管理が必要だったけれども、今は逆になってきているから打ちたい人が打ちたいときに打てないというシステムは行政が調整する必要があると思います。

■都議選に向けて

安倍: 告示後は、具体的にどのような旗印で選挙活動を展開していくのか。

統一的な選挙キャンペーンとしては、コロナからの1日も早い回復だと思います。我々は以前から「東京を世界一の街にしよう」というスローガンのもとで、住みやすい、安全、反映している街を作ろうという話をしていて、各都市間の競争に勝てるような都市を作ろうと掲げていますが、今回の選挙の1番のテーマは1日も早いコロナからの回復でしょうね。

安倍: コロナからの回復については、都民ファーストも同じようなことを訴えるのではないか。

鴨下氏: どの政党も同じことを言って良いと思っています、都民が今1番苦しんでいるのはそこですから。違いを出す必要はない。今(都政)をハンドリングしている都民ファーストの会だと頼りがいがないから、1日も早く我々が奪還して、手練の政治家たちがもう一度安定した都政を運営します。

安倍: どのように情勢を分析しているのか。

鴨下氏: 前回は負けすぎましたから、それに比べたら今回は議席を相当数増やせると思っています。努力に見合った議席数と言うもので、それだけ4年間努力を続けてきたと言うことです。地域の方々とコミュニケーションをとって、声を聞いてきて、いよいよこれを実現するために自分たちが議席を取るということですから。

自民党に対してもっとしっかりしろと言う意味では微妙に逆風だと思っています。だけど、野党に追い風が吹いているということではありません。だから結果的にそれぞれ1人1人の候補者の地力の勝負だと思うので、それにわれわれは必ず勝利できると思っている。

風頼みの選挙をした前回の都民ファーストと違って、今回はどこにも風が吹いていない。そうしたら候補者一人ひとりの地力があるところを有権者は評価すると思います。我々が必ず勝利できるだけの底力のある人が候補者になっています。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部