安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部

【まとめ】

・仏マクロン大統領、菅首相と24日に会談。

・共同声明に「両国は、子の利益を最優先として、対話を強化することをコミットする」との文言盛り込まれる。

・日仏当局はこの問題に真摯に取組むべきだ。

 

東京五輪開会式に出席するため訪日中のフランスマクロン大統領は7月24日午後、菅義偉首相と会談し、共同声明を出した。

その中で、「領事協力」として、以下の文言が盛り込まれた。

「両国は、子の利益を最優先として、対話を強化することをコミットする」

フィショ氏の問題を指しているのは明白だ。マクロン大統領は2019年のG20サミットの時にも、当時の安倍晋三首相にこの問題を提起している。しかし、その後、進展はない。

フィショ氏は21日の会見で、「ハンストの目的はマクロン大統領に会うことではありません。もし握手をして(日本側が)『最大限努力する』と言うだけなら、私は既に2年前に聞きましたし、それで私の子どもたちの境遇が改善されることはありませんでした」と述べている。また、「ここでの私の戦いは、私の子どもたちを保護すべき日本当局との戦いなのです」とも。

氏のハンストの目的に対しては、「フランス政府に対する圧力」とした上で、「私の子どもたちはフランス国籍も持っていて、居所に関わらず、保護や人権保障はフランス政府にかかっています。私はハンストを通して、この非難すべき状況をフランス政府に理解してもらいたい。そして日本当局に対して、人権侵害を改善し、子どもたちを東京の家に返し、二度と同じことがないよう約束するように求めてほしい。日本が断った場合には、国際法の侵害として、フランス政府が強い制裁を科すと信じています」と述べている。

こうした氏の決意は、昨日訪れた仏大統領府の外交顧問らを通して、マクロン大統領に届いたのだろうか。そしてそれは菅首相に明確に伝えられたのだろうか。

上記の声明に記された一文からそれは伝わってこない。「領事協力」という名の下で、両国政府がどのような協議を行うのか。従来と同じでは、新たな進展は全く望めない。

フィショ氏の願いは、その他の多くの同じ境遇にある親と共有されている。この問題を考える時、なにより最優先しなければならないのは、子どもの福祉である。いまのまま、放置しておいて良いわけがない。日仏両当局が、「子の利益を最優先として、対話を強化することをコミットする」と声明に盛り込んだことは重い。今度こそ、「こども連れ去り」問題に対し、真摯に向き合い、解決に向け、協議を加速していかねばならない。

▲写真 ヴィンセント・フィショ氏(2021年7月16日) ⒸJapan In-depth編集部

日仏共同声明(外務省HPより)

冒頭、菅総理大臣から、マクロン大統領の2年ぶりの訪日を歓迎するとともに、マクロン大統領が東京オリンピック・パラリンピック競技大会への支持と参加をいち早く表明したことへの謝意を表明しました。これに対し、マクロン大統領から、昨日行われた開会式は素晴らしかった旨述べるとともに、東京大会の成功を確信している旨発言がありました。

1. 菅総理大臣から、本年5月のフランス練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」の日本寄港に際する共同訓練を始め、日仏間で自由で開かれたインド太平洋に向けた具体的協力が進んでおり喜ばしい旨述べ、引き続き協力を強化していきたい旨述べました。これに対し、マクロン大統領から、インド太平洋地域において引き続き日本と緊密に連携していきたい旨述べました。

2. 二国間経済関係に関し、両首脳は、日仏両国の企業間協力の進展を歓迎しつつ、日仏産業協力委員会を通じ、環境、デジタル、サプライチェーンの強靱化等の協力を深化させていくことで一致しました。また、菅総理から、EUによる日本産食品への輸入規制撤廃に向け、フランスの協力を求めました。

3. 両首脳はまた、気候変動、生物多様性及びアフリカの開発などのグローバルな課題に関する協力について意見交換を行い、本年6月のG7コーンウォール・サミットの成果を、本年10月にイタリアで開催予定のG20サミットにつなげるべく協力していくことで一致しました。

4. 両首脳は、中国を含む地域情勢への対応について意見交換を行い、日仏で緊密に連携していくことで一致しました。さらに両首脳は、香港情勢、新疆ウイグル自治区の人権状況についても深刻な懸念を共有しました。

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トップ写真:日仏首脳会談(マクロン仏大統領との昼食会)2021年7月24日
 出典:首相官邸