政府と国民の「一心同体化」が進む中国

 だが、そんな人ばかりではない。「中国には『貧しいときは我慢し、富んだときに復讐する』という伝統的な考え方があります。SNSで攻撃するのは、まさに歴史的な復讐じゃないですかね。魯迅は『中国人には骨がない』と言っていますが、今も変わらない側面があるのですよ・・・」と、得々としてまくし立てる留学生もいる。周囲の噂や聞きかじりの知識ばかり披歴するさまは、まるで他人ごとのようだ。

 いずれにしても、中国政府が南シナ海問題で強硬姿勢を崩さず、着々と軍事拠点化を進める背景には、こうした中国国民の伝統的な思考に支えられた部分があるに違いない。あるいは、決して「弱腰外交」を許さない国民気質に突き上げられた結果と見るべきかもしれない。経済的、軍事的に強大になった中国では、もはや中国政府と国民は一心同体の関係になりつつあるようだ。

 平和な時代ならいざ知らず、米中経済対立が激しさを増す中で、今後、もし何かのきっかけで日中対立が激化したとき、中国人、とりわけ日本で屈折した思いを抱く人々は、どのような政治的態度を示すのだろうか。デモ行進か、「一斉帰国」か。中国政府に強要されて、あるいは自ら進んで、日本の友人や知人の思想信条や活動内容を報告したりするだろうか。

 AIを駆使した中国政府の監視の目はすでに海外に及んでいる。中国に不都合な映像や記事は海外のネットですら妨害されて見られないのが現状だ。日本の官庁や企業、個人の情報が干渉・操作される危険性はますます高まっている。こんなことは考えたくもないが、すでに香港人の例もあるように、いつか国境を越えて「誘拐」や「失踪者」が出る事態になるかもしれない。

 いずれにしても、一部の不埒な輩のせいで、大多数の善良な中国人が苦悩し、傷つくことは明らかだ。そんな時代が来ないことを、心から祈るばかりだ。

 私自身はと問われれば、SNSも好きではなく、日本で生まれ育ったこともあり、「海は、鳥も魚も国境など構わず行き来しているのだから、各国に最低限の領海範囲を定めたうえで、誰でも自由に航行できるよう、世界の共有財産になれば良い」と、素朴に思うばかりなのだが。

(譚 璐美)