小規模で太いコミュニティの作り方

 もちろん、クラウドファンディング終了直後から大きな取引先が掴めたわけではない。今回のプロジェクト実行者の場合、クラウドファンディングは副業だったこともあり、細く営業活動を継続し、今流行りの週末起業のような形で無理なく進めていった。

 その時に後押しとなったのは、クラウドファンディングの頃から一貫して製品が生まれるに至ったストーリーを打ち出してきたことだ。インスタグラムで軽くバズったことも幸いし、バイヤーの目に止まり、ショッピングモールに複数店舗を展開する雑貨店での取り扱いが決定した。和小物系の雑貨店と木製スピーカーは相性が良く、そこから引き合いが加速度的に増加していった。

 最終的には銀座LOFTでも取り扱われるほどに成長し、「ハンドメイドのスマホ用木製スピーカー」というニッチな製品でありながら、共感するユーザーに適切に届けられるルートを確立した。

 木製スピーカーのプロジェクトは、大手小売りや商社から見れば吹けば飛ぶような案件かもしれない。しかし、本稿で述べてきた通り、マス消費の時代が終わりつつある今、大ヒットを飛ばし続けるには相当な胆力がいるし、空振りに終わる可能性も高い。

 だからこそ、クラウドファンディングからD2Cに、ユーザーにものを届ける上で大切なのは「小規模で太いコミュニティの形成」になる。

 消費行動の変化や社会を取り巻く情勢の変化により、アポを取り、足を運んで売り込む営業スタイルは過去のものになっている。いきなり「買ってください!」と突撃すればどうにかなるというものではない。

 ストーリーで共感を呼び、自分だけでなくユーザーの拡散力を借り、商品だけでなく作る人や売る人にも興味を持ってもらう。いわば、友達の輪を広げていくような感覚でコミュニケーションを広げながら製品を届けていくことが必要なのだ。もちろん、SNSの活用は欠かせない。

 アカウントを育て、狙ったユーザーに届くようになるまでは相当の時間がかかる。だが、出発点をクラウドファンディングというすでにユーザーが集まっているプラットフォームにすることで、ストーリーで共感を呼ぶというアプローチ方法の効果は飛躍的に高まる。