時代はストーリーありきの「ひとり商社」

 このような手法のメリットはもう一つある。それは会社員の副業や週末起業のようなミニマムな規模でのハンドリングか可能な点だ。

 爆発的な売り上げは立たないが、小規模コミュニティで購入確度の高い、濃いファンを育成することで上記の木製スピーカーのように、個人で、それも副業で日本の一等地にあるショップに並ぶヒット商品を生み出すことができる。

 起点は売れるものではなく自分がいいと思ったもの、バックグラウンドに共感したものという「ストーリーありき」で、ニッチ市場を開拓しながら製品を届けていく。

 筆者はこれを「ひとり商社」と名付けている。実際、筆者がこれまでコンサルティングしてきた事例でも会社員や主婦、個人事業主になったばかりの人ばかりだ。皆それぞれ自分の好きや得意を生かし、今では立派なひとり商社としてまだ見ぬ製品を日本のユーザーに届け続けている。

 コロナ禍において、商談から仕入れ、販売に至るまですべてネットで完結するのが当たり前の風潮になってきたことも後押しになっている。

 ひとり商社としてユーザーに製品を届けるのは、昔ながらの個人間取引に似ているかもしれない。買い手は売り手の顔はもちろん、作り手のストーリーなどのバックグラウンドを知った上で購入する。だから満足度が高いし、売り手や作り手のファンになってくれる。

「製品ありき」ではなく「ストーリーありき」、そして作り手、売り手、買い手のすべての人が幸せになれる「人ありき」がこれからの消費スタイルにとって一つの大きな流れになると筆者は考えている。

 クラウドファンディングはそのための一つの手段に過ぎない。しかし小規模でニッチな市場を開拓し、D2Cでユーザーに適切に製品を届けていく上で、ぜひ活用すべき手段と言えるだろう。

(山下 貴史)