ハードルが高すぎる現在の解雇法理
「解雇法理について、(人員整理の必要性など)4要件全てを満たすことは、世界経済に伍していくという観点からは大変厳しい。緩和をしていくべき。(中略)解雇法理そのものよりも、組織全体で迷惑をかけている人に対して解雇が会社として検討しやすくなる柔軟な要件を入れるなど、是非今後検討していただきたい」
日本では「労働契約法」第16条で解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効にする」としています。
ある意味、当たり前のことが書かれているのですが、裁判で係争になった場合、企業が客観性・合理性を持った正当な理由を明らかにするとともに、配置転換など解雇を避ける努力をしたかなど、4つの要件を満たすことが求められます。企業で雇用施策に携わった私の認識では、「社会通念上、解雇に相当する」とは、「使えない」「働きが悪い」というレベルではなく、「(対象者が)犯罪者を犯した」くらいのハードルの高さです。
長らく賃上げが実施されないことや人材流動化の必要性を背景に、解雇規制の緩和、つまり、今よりも解雇しやすくするべきだという意見が散見されるようになりました。一方で、緩和に対する反対論は根強くあり、今後、経済界や法曹界などで議論が活発になると見込まれます。
ただ、短期間で議論が決着するとは考えられません。人員構成の変革を伴うビジネスモデルの変容が重要課題の企業は、議論の行方に関係なく、人員削減を断行することになります。