(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 世界的な政情不安や物価高騰のなか、賃金は上がらず、住宅ローンの返済が厳しくなっている人が多いのではないだろうか。加えて、住宅ローンの金利も上昇傾向が強まり、ますます返済が難しくなり、ローン破綻が増加するのではないかという懸念が強まっている。現在住宅ローンを利用している人だけではなく、これから住宅ローンを利用してマイホームの購入を考えている人は、十分に気をつけておきたい。

住宅ローン返済に行き詰まる人が減らない現状

 2020年、新型コロナウイルス感染症拡大が始まった当初、住宅ローンの返済に行き詰まる人が急増するのに備え、金融庁では全国の金融機関に対し、住宅ローンを返済している人から「返済条件の変更によって返済額を軽減したい」などといった申し込みがあった場合、柔軟に対応するように通達を出した。

 2020年3月には全国の銀行に1028件の条件変更の申し込みがあり、4月には5730件、5月には6637件と急増した。2022年に入ってからは比較的落ち着いているとはいえ、依然として相談がなくならない。【図表1】にあるように、2022年9月段階で、全国の銀行への申し込み件数が累計で7万件を超え、月間1000件以上の返済条件変更の申し込みがあるのが現実だ。


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 それもあって、住宅ローンのフラット35を実施している住宅金融支援機構では2022年8月26日、ホームページに「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」という文書を掲載した。

 住宅金融支援機構でも、フラット35利用者のうち、取り扱い金融機関に返済条件変更の申し込みを行った人の統計を取っており、2022年3月段階で、累計1万5000件以上に及び、単月では300件台が続いている。しかも、2022年に入って、むしろ増える傾向にあるため、ホームページでのお知らせにつながったようだ。民間金融機関の住宅ローン担当者からは、

「最近は住宅価格の上昇もあって、住宅ローン利用額が増えている。企業の資金ニーズがさほど強くないので、個人向け融資に力を入れる金融機関が多く、融資競争が激しくなっている」
「住宅ローンの融資競争が激化し、審査が甘くなっている面もあるのではないか」

 といった声が聞かれる。特に東京都心やその周辺のマンション・一戸建て価格の高騰によって、評価価値が上昇しているのを受け、担保評価が甘くなっているのではないかという見方が強まっている。かつては購入価格の8割までの融資が常識だったのが、最近では9割、10割のケースも増えているという。