ナチュラル・リーダーシップは新世代リーダーの必須スキル

 世の中は急激かつ急速に変化し、未来の予測が困難な時代へと突入しています。その中で、誰もが、否が応でも新しいスキルや知識の習得を要求され続けています。

 しかし私は、さらなるスキルと知識のアップデートだけでは、こうした世の中の動きや、その影響を大きく受けるビジネス界の変容に、十分に対応できないと考えています。

 むしろ、これからの時代に求められるのは、状況の変化に臨機応変に対応すること、そして、自らの「埋もれている力」に光を当てて、引き出すことでしょう。

「埋もれている力」は、どこにあるのか?

 私は、「感覚」の中にあると考えています。

 人間には、感覚があり、感情があり、思考があります。ところが、社会に適応するにあたっては、「私はどう感じるか」ではなく、「私はどうすべきか(どう振る舞うべきか・どのように考えるべきか)」が優先され、思考ばかりがフル回転します。感覚や感情に、蓋をかぶせてしまうのです。

 さらに、仕事の仕方も、オフィスや自宅の一室でパソコンに向き合い、キーボードを叩いたり、カメラを通じてほかの人と言葉を交わしたりして過ごしがちです。この状況下では、視覚と言語に関する脳の機能部分だけが酷使され、その他の感覚が発動する機会はほとんどありません。

 こうして、私たちの感覚は鈍っていきます。

 しかし、この鈍ってしまった感覚の中にこそ、本当の自分、そして、本来の力が埋もれています。

 この「埋もれている力」を掘り起こすためには、自分自身を客観視したり、感じたりすることで、自分本来の感覚の存在に気づくことから始めなくてはなりません。ただしこれは、ほかの人間の助けを借りるだけでは不十分です。現代の人間は思考に頼って生きていて、その根底にある「感覚」の世界を開く力を持っていないからです。

「感覚」を呼び戻すには、「雄大な自然の力」を借ります。自然は、埋もれてしまっている人間の感覚を開くにあたって、最高の環境を提供してくれます。

 自然の中に身を置くことで身体が楽になり、普段は感じないそよ風や木や草の香りに気づくことはありませんか?

 自然に触れ、その存在を意識することで、自然から得る視覚、聴覚、嗅覚的な刺激に集中し、鈍っていた感覚を開き、研ぎ澄ませていくことができます。

 都会の部屋の中にいても、窓の外の木々を見たり、室内の花や観葉植物を愛でたり、ペットと触れ合うだけでも、ストレス軽減、気分の上昇、生産性と集中力の向上に寄与すると言われています。

 私が牧場で研修を行っているのも、このような理論に基づいています。

 積極的に自然と触れ合うことで、身体感覚が研ぎ澄まされていきます。

 この感覚を出発点として、他者の反応を鋭敏に察するようになり、自分の本心を感じ取ることもできるようになります。危機的状況でいち早く、最適なアクションを起こせるようにもなるでしょう。

「ありのままの私が、自然や他者の一部であるという感覚に基づいて発揮するリーダーシップ」

 これが、ナチュラル・リーダーシップであり、これから求められるリーダーの在り方なのです。

<連載ラインアップ>
■第1回 馬の群れが教えてくれる、多様性時代のしなやかな「リーダーシップ」とは?(本稿)
■第2回 女性リーダー比率30%超の資生堂は、なぜ「牧場研修」を導入したのか?
■第3回 50代経営者が猛省、牧場研修で気づかされた「指示出し」の問題点とは?
■第4回 なぜリーダーは「自分以外の存在を感じられる力」を身に付けるべきなのか?
■第5回 何をやっても無反応、馬を操れない研修参加者はどう窮地を乗り越えたか?

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
●会員登録(無料)はこちらから

(小日向 素子)