長い休場後の復活の難しさを知っていただろうし、それを努力と決意で跳ねのけての成果であっただけに、優勝の瞬間には泣いて喜んだとも聞く。

 同時に「注意」勧告を受けた鶴竜は2場所全休中に引退表明したし、「注意」勧告後も3場所連続全休の重みは誰よりも白鵬自身が知り抜いていた。

 したがって、白鵬の7月場所は決死の日々であったし、優勝した瞬間には喜びが爆発してしまったのも当然であろう。

 こう見てきただけでも白鵬の勝利への執念は角界一で、正直なところ脱帽し、乾杯!という以外にない。

横綱審議委員長の評価

 しかし、「勝ち」にこだわるあまりの取り組み内容は粗雑で大相撲というよりプロレス紛いで、最高位の横綱として評価できるものではなく、「相手の挑戦を受けて立つという横綱の本来あるべき相撲からは、かけ離れていた」(読売新聞)、「荒っぽいかち上げや張り手、・・・派手なガッツポーズは物議を醸すだろう」(産経新聞)などと評していた。

 白鵬が5月場所を休んだ時、東京相撲記者クラブ会友の原和男氏(94歳)は「12回目の優勝をした時、・・・得意気に〝双葉山に並びました″と言ってきたことがありました。・・・品格の部分では足元にも及ばない。〝あなたと双葉山の間には天地ほどの差がある。全く及ばないよ″と言うと、むっつりとして去っていきました」(「週刊新潮」2021.6.3)とエピソードを語り、引退勧告までしていた氏は名古屋場所をどう見ただろうか。

 千秋楽の翌日(7月19日)に開かれた横綱審議委員会(矢野弘典委員長)は、照ノ富士の横綱昇進を「全会一致で推薦する」ことを決定すると同時に、「さらに精進を重ねて品格・力量ともに他の力士の目標となる存在になってほしい」と注文した。

 この裏には、千秋楽の白鵬との一番が強い印象を与えたに違いない。ほかでもなく白鵬に対する注文の裏返しとなっていたからである。

 実際、白鵬については「ケガを乗り越えて全勝優勝という結果を残してくれた」と評価したが、他方で相撲内容を厳しく批判した。

「横綱にあるまじき振る舞いではないか、ひじ打ちと疑われかねないかち上げ、武道にはあり得ないガッツポーズ、どう見ても美しくない。長い歴史と伝統に支えられてきた大相撲が廃れていくという深い疑念をみんなで共有した」と。