「遅れ」と言えば、病床再編もそうである。1年もの時間があったのに、医療資源の最適配分という仕事を政府は怠ってきた。その結果、世界でトップクラスの医療資源を持ちながら、重症者が千人を超えると、医療崩壊を訴えざるをえなくなっている。13日も、重症者は1214人と過去最多を更新している。

 重症者がある程度回復した状態で、中軽症者用の医療施設に移さねばならない。ところが、その受け皿となるべき民間の中規模の病院は、風評被害を恐れて手を挙げようとしないのである。

 コロナ重症病床1床あたり1500万円の補助金を支給することを決めている。それはもちろん助けにはなるが、感染して入院してから治療を終えて帰宅するまでのプロセスの中で、症状に応じて1〜2回は転院するという流れができていないのである。こうして、重症者用の病床が不足する羽目になってしまったのである。

 各地の病院配置は、自治体の長とその地の医師会がよく知っているはずである。ここでも、両者の連携が上手く行っていない。そのために、医療先進国でありながら、病床不足という馬鹿げたことが起こっているのである。全国の大学病院もコロナ重症者用に十分な病床を提供していない。大学は文部科学省の管轄である。ここでも厚労省との連携が取れていないのである。

コロナを担当する大臣が3人も、なのにこのワクチン接種の遅れ

 コロナ感染で入院できる患者は、大阪で10%、兵庫で15%という驚くべき数字が出ている。第4波で自宅で死亡した人が大阪と兵庫で38人に上る。これは医療が発達した先進国の姿ではない。ワクチン接種も医療関係者すら2回接種したのは4分の1のみである。

 田村憲久、西村康稔、河野太郎と3人もコロナ担当大臣がいて、しかも加藤勝信官房長官は厚労大臣経験者である。それに、菅首相を加えれば、5人でコロナ対策を行っていると言ってもよい。その結果が緊急事態宣言をいつまでも延長し、ワクチン接種もG7で最も遅いという結果である。

 NHKの世論調査(7〜9日)では、内閣支持率が35(−9)%、不支持率が43(+5)%と、昨年9月の内閣発足以降最低を記録している。政府のコロナ対策については、「評価」が33%、「不評価」が63%、ワクチン接種に関しては、「遅い」が82%、「順調」が9%、東京五輪については、「中止」が49%、「観客制限で開催」が19%、「無観客で開催」が23%、「これまで同様開催」が2%である。

 また、読売新聞の世論調査(7〜9日)では、内閣支持率が43(−4)%、不支持率が46(+6)%である。政府のコロナ対策については、「評価」が23%、「不評価」が68%である。東京五輪に関しては、「中止」が59%、「観客数を制限して開催」が16%、「無観客で開催」が23%であるが、緊急事態宣言対象6都府県では「中止」が64%、東京都では「中止」が61%である。

 いずれも、菅政権にとっては厳しい結果となっているが、コロナ対策の失敗が支持率を下げていることは疑いえない。

 東京五輪については、世論は突き放し始めている。IOCも日本政府も「開催する」と繰り返すのみである。しかし、柔道のロシア国際大会から帰国した選手団で新たに1人がコロナに感染したことが12日に判明した。これで2人目である。ロシア大会には4人の選手と6人のスタッフで参加したという。感染者の詳細、感染経路などは不明であるが、柔道は相手と組合う濃厚接触の競技である。感染防止対策をきちんと講じていても、100%の安全は確保できない危険性があることを示している。

 IOCのバッハ会長は、5月17日に来日する予定であったが、それを6月に延期した。しかし、そのときに日本でのコロナ感染状況がどうなっているか分からない。

 米元サッカー五輪選手の政治学者のボイコフ教授が、5月12にNYタイムズに寄稿し、「科学に耳を傾け、危険な東京五輪は中止すべきだ」と主張した。日本のワクチン接種が2%未満で、6割の国民が開催反対だという数字も引用している。教授は「IOCは公衆衛生ではなく、あくなき利益の追求ばかり考えている」と痛烈に批判している。

 バッハ会長を「ぼったくり男爵」と揶揄したワシントンポストに続き、また有力誌のニューヨークタイムズの批判である。世界が東京五輪を見つめる目は厳しさを増している。

(舛添 要一)