国家を監視するために用いられるデジタル技術

 しかし、それでも一方的に国家が国民の個人情報を保有することに対しては、不安が拭えない。そこで考えられたのが、今度はデジタル技術を使って、国家の活動を監視し、国民の権利侵害を防ぐという方法である。

 国家が、個人情報を集めることは福祉国家を維持するために必要である。しかし、その集めた個人情報を国家がどのように管理し使用しているか、それをチェックする仕組みを作ることによって、国家の行動を監視し、民主的統制を実現しようとしたのである。

 例えば、エストニアでは、国民の個人情報に、誰がいつアクセスしたか、各自のポータルサイトから確認できる。個人情報へのアクセスについてはすべてログ(アクセス記録)が取られていて、自分の情報にいつ誰がアクセスしたのかを国民自身が確認できる。

 私自身が直接見聞した事例では、ある国民が自身のポータルサイトを見たら、警察官がアクセスした記録が見つかった。その人は不審に思い、アクセスした警察官にアクセスの理由を問い合わせたのである。アクセスした者は、このような問い合わせに対しては回答の義務がある。

 このケースでは、ある事件の捜査のなかで、事件が発生した場所の周辺に駐車していた車の所有者を調べたが、その時、その人の車も対象になったという回答があり、警察官の行為に納得したという。納得できない場合には、告発することができる。この制度が、国家の行為に対する効果的な監視機能を果たしているという。

 それでも、まだ国が信頼できないという人がいるかもしれない。そのような不信を拭うため、データの保管を分散し、IDを鍵としてのみそれらをつなげることができるシステムを作り、かつそれらの管理は、政府からの独立性の高い公共機関が行うという制度を採用しているところもある。情報公開制度はもちろん、電子投票や公文書管理、オープンデータの制度なども、政府の透明度を高める上で役に立つ。