少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute:次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。今回は日本の行政のデジタル化について。デジタル技術に対する知識の乏しさと法学的思考が行政のデジタル化を妨げている。

◎過去の記事はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=NFI&page=1)をご覧ください。

(森田朗:NFI研究所理事長)

 先日、霞が関の某省からシステム構築の受注を受けた、ITベンダーの若手技術者と話をする機会があった。

 その技術者が言うには、官庁の要望に応えてシステムの設計をしているが、官庁側が求めているものは、あるべきデジタル化の姿とはほど遠い。こんなことをしていては、わが国はますます世界から取り残されてしまうと感じ、やる気を失いつつあるという。

 その官庁が発注したシステムとは、補助金や交付金の申請をデジタル化するためのシステムだそうだ。いうまでもなく、行政分野では、許認可や補助金等に関して多数の申請事務が存在している。

 これらの事務は、現在、手作業で処理されているが、それには膨大なペーパーワークを伴うため、行政機関の側はもとより、申請する国民の側の負担も大きい。

 これをデジタル化しようというのだが、官庁の要望に従ったのでは、効率化も進まず、デジタル技術が本来もつ力を発揮することもできないというのである。

 給付金や補助金制度は、コロナ対策にみられるように、生活困窮者の救済や経営難などに陥っている者の支援、あるいは産業の振興を図るために、一定の条件を満たしている者に対し、申請によって現金やその他の物資やサービスの給付を行う制度である。

 これまでの方法は、不正や制度の悪用を防ぐために、申請者本人であること、収入や家族構成など申請者の置かれている状態、営業利益や支出など支援を必要とする経営状態にあることを示す情報を、それに関する情報を保有している行政機関や金融機関等から証明してもらい、その証明書を申請書に添付して申請する、すなわち行政機関の窓口に提出するというものである。