マレーシアはなぜ金正男暗殺事件の被告を釈放したか

 マレーシアで起きた「金正男暗殺事件」の真相は、北朝鮮が描いたシナリオ通り、迷宮入りすることが確実な情勢となった。

 言い換えれば、こうなる結末(北朝鮮は訴追されない)を予測していたからこそ、実行に及んだといえるだろう。

 自ら手を汚すことなく、あえて「友好国」の第三国の人間を厳選して訓練し、「化学兵器テロの実行部隊」として友好国の最前線に送り出す。

 インドネシアとベトナムの女性被告は、「テレビのいたずら番組の撮影と思っていた」と無実を主張する、冷戦時代さながらの「殺人ゲーム」に世界は震撼した。

 その勝者と見られる北朝鮮は、何の罪に問われることなく、同事件はまるで何もなかったように歴史的に封印される見通しだ。

 11日、マレーシア高裁は、金正男氏の顔に神経剤VXを塗った殺人の罪で起訴されていた実行犯、インドネシア人のシティ・アイシャ被告(当時、インドネシアにすでに帰国)を釈放した。

 一方、14日、同高裁は同罪で起訴されていたベトナム人のドアン・ティ・フォン被告の弁護側の起訴取り下げ要求を却下、公判続行を決めた。

 しかし、11日、14日とも公判は開廷されず、「心身ともに衰弱しており、医師の判断が必要」(高裁)との判断で、初の被告人質問の公判は、結局、4月1日に再延期された。今後、実際に、公判が行われるかは微妙なところだろう。

 フォン被告の爪には化学兵器VXの痕跡が残されていたことや、アイシャ被告の釈放でマレーシアや国際社会からマレーシアの司法制度の独立性に非難が強まっていたことが、公判続行に影響したと思われる。

 しかし、マレーシア政府の「差別的司法判断」は、ベトナムとの外交問題に発展しており、フォン被告が情状酌量で釈放される可能性もある。

 暗殺を指揮した北朝鮮の工作員がすでに逃亡している中、事件の真相を明らかにしていくのは、もはや難しいと言わざる得ない。

インドネシア・ジャカルタでジョコ・ウィドド大統領(中央)と面会するシティ・アイシャさん(右、2019年3月12日撮影)。(c)BAY ISMOYO / AFP 〔AFPBB News〕

 暗殺事件は、2017年2月13日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が、朝9時頃の1日で最も混雑するマレーシアのクアラルンプール国際空港(第2ターミナル。「エアアジア」など格安航空専用空港)で勃発。

 2017年10月に始まった公判で、弁護側は「両被告が殺意を持っていなかった」と無罪を主張する一方、検察側は「VXガスの毒性を熟知していた訓練された暗殺者」と有罪に自信をのぞかせていた。

 これを受け、高裁は「殺意があった」と判断し、今月11日には、弁護側の被告人質問などが始まる予定だった。


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