結論から申し上げると否である。筆者はプーチン大統領にとって最大の強敵は「インフレ」であると考えている。

 実際、プーチン大統領も同じ演説で「ロシアにとって喫緊の課題は雇用とインフレである」と指摘している。

 足許、世界の金融マーケットでもコロナパンデミック後のリスク要因としてインフレーションが注目されている。

 その背景には米国を筆頭に先進国の中央銀行による超金融緩和、コロナ禍による供給網の機能不全、コロナ禍終息期待に伴うリバウンド需要などが指摘されている。

 ロシアもその例外ではなく、国内物価は2020年夏からじりじりと上昇を続けている。しかし、その背景は先進国のそれとはやや趣を異にする。

ロシア インフレ率推移 (前年比・%)

 ロシアのインフレ、すなわち物価上昇の主因は食料価格である。

 ロシアは食料輸出大国であるにもかかわらず、国内の小麦、そば粉、ひまわり油、砂糖といった基本食料品価格が、報道によれば2倍近く高騰している。

 さらにロシア人の主食であるジャガイモ、ビーツ、ニンジンや卵も同様に値上がりしている。いずれもロシア国内での自給が可能な品目である。

 食料価格の値上がりは、ロシアでも低所得層の生活をストレートに圧迫する。支出に占める食料品価格の比率が高いためである。

 ロシア中銀の調査によれば、2021年4月時点で最低所得層に対するインフレ率は30%、平均所得層に対しても14.5%と算出している。