と言っても、大手農業会社や大手小売り会社に対する価格統制という、反市場経済的な手法がその中心である。

 一方、プーチン大統領が政府以上に信頼を寄せていると思われるのがロシア中央銀行である。

 2013年からロシア中銀を率いるナビウリナ総裁はインフレ・ファイターとして、これまでも国際金融筋から高く評価されているが、今回のインフレ懸念再燃に対しても2021年3月(+0.25%)、4月(+0.5%)、6月(+0.5%)と矢継ぎ早に政策金利の引上げを行った。

 また、ロシア政府の価格統制に対しては市場原理を歪め、長期的には価格の高止まりを招くとして反対を表明している。

 コロナ禍で政府と中央銀行の政策協調が図られることが多い中、原理原則を主張するナビウリナ総裁は称賛に値する。

 と同時にプーチン大統領がそれを容認する(筆者が記憶する限り、プーチン大統領がロシア中銀の政策に異論を唱えたことはない)ことからも、プーチン大統領にとって「インフレ」の重みが窺い知れる。

 ロシアでは2021年9月に下院議員選挙が実施される。

 これまでのところ、プーチン大統領を支える与党体制が覆る兆候は認められないが、有権者にとってはコロナ対策、対米関係、ましてやナワリヌイ氏の処遇よりも、足許の物価上昇抑制こそ候補者選びの大きなカギとなる。

 1990年代を知らない有権者にプーチン大統領の威光を示す絶好の機会かもしれない。

(大坪 祐介)