ミサイルの射程制限解除が意味すること

 米国が韓国による独自軍事力の強化を考え始めたのは、朝鮮動乱から約20年後のニクソン政権だという。当時、ベトナム戦争は泥沼化しており、周辺東南アジア国も共産化の危機があった。そこで、米国カーター政権時の1979年に、米韓覚書でミサイル指針を決めた。ミサイルの飛距離は南北軍事境界線から平壌に届かない距離(111マイル<180キロ>)、弾頭の量は0.5トンとした。

 この話で重要なのは、世界が北朝鮮の核ミサイルに目を奪われている間に、韓国が独自のミサイル反撃能力を強化できるようになった点にある。我々が北朝鮮に注目するのは核弾頭を持っているからだが、ミサイル性能について言えば、韓国のレベルの方がはるかに高いというのが軍事専門家の意見である。

 米韓ミサイル指針の歴史を振り返ると、2001年に「悪の枢軸」とされた北朝鮮への対応を強化するため、射程は平壌をカバーする186マイル(300キロ)に伸ばした。オバマ政権下で6カ国協議が進んだ2012年には、対北への影響力とそれを支える対中を考えた距離として497マイル(800キロ)まで延伸されている。この時、弾頭の量も300キロまでは2トン、500キロまでは1トンに拡大された。

 ソウルから北京までが594マイル(956キロ)なので、これは中国を刺激しないギリギリの距離だったと言えよう(板門店はソウルの60キロ北にある)。

 そして、北朝鮮との独自外交を進めるトランプ政権が三隻の空母打撃群を日本海に集合させた2017年、トランプ政権はミサイルの距離制限を廃止すると文大統領に約束した(同時に重量制限も解除)が、同政権では在韓米軍への韓国の負担金問題があり、実行をせずに終わった。

 文大統領は、バイデン大統領に替わったところで、在韓米軍の負担金問題で譲歩し、2021年度の10億3000万ドルの拠出を含め、5年間の契約を結んだ。これにより、一気に同政権の信頼を得て、ミサイル制限距離の撤廃にこぎつけたのである。

 韓国は、悲願だった大陸間大道ミサイル(ICBM)を保有することが可能となった。韓国は現在、射程500マイルのミサイルを保持しているが、韓国軍事筋によれば、ICBM配備もそう遠くない将来に可能になるという。経済的にも軍事的にも一流国に手が届きそうな状況に来たのである。