今、北朝鮮の若者たちがアツい。自由のない独裁体制の国の若者文化などたかがしれていると思ったら大間違いだ。北朝鮮社会では、当局の締め付けが効かないほどに、新世代が着実に台頭している。そのリアルな現状を、北朝鮮の幹部養成機関で教鞭を執った脱北者の金興光氏が解説する。

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 北朝鮮で8月28日は、若者のための祝日「青年節」である。例年、この日が近づくにつれて、北朝鮮のすべてのメディアは「青年こそが北朝鮮労働党の力強い後方部隊であり、金正恩総書記に忠誠を尽くす何百万人もの青年がいるからこそ、北朝鮮の未来は安泰なのだ」という内容の宣伝や扇動を繰り返す。

 今年の青年節では、金正恩総書記本人が全国から忠実な青年リーダーらを平壌に呼び、数千人規模の盛大な記念行事を開催した。さらに、金正恩総書記が参加者と一緒に記念写真に収まり、選ばれた何人かには直接、激励したというから大サービスである。

 青年層を称揚すると同時に、金正恩総書記への忠誠を促す政治的なイベントである青年節。だが、その舞台裏では正反対のミッションも進行している。体制に歯向かう青年を容赦なく処断し、命すらも奪うという恐ろしい惨劇が同時に進められているのだ。

 代表的な事例として、青年教養保障法などの採択が挙げられる。同法などの採択のため、9月27日に第14期第5回最高人民会議を平壌で開催すると公示した。

 情報筋によると、青年教養保障法とは、青年層の間にはびこる反社会主義的な行為に処罰を加え、改心させるためのあらゆる対策を法制化した、若者を飼いならすための法律だという。8月21日には、北朝鮮の北部国境地帯の多くの都市で、韓国ドラマを見て、影響を受けた若者らを公開人民裁判にかけ、厳罰を下すという見せしめも行った。

 それだけではない。北朝鮮は2020年12月11日、新たに「反動思想・文化排撃法」を制定。市民の思想を均一化しようと目論むと同時に、外部の文化に触れさせないようにするための大々的な作戦に乗り出した。ここでも主なターゲットは若者や学生だ。

 逆にいえば、北朝鮮の今の若者が、それだけ金正恩総書記を悩ませている存在だということになる。金正恩総書記は教養と脅迫、賞賛と罰というアメとムチを使い分けながら、若者を以前と変わらぬ従順な北朝鮮の住民に仕立て上げるべく努めているが、時代が変わるにつれ、そうした締め付けが通用しない方向で状況が激変してきている。