昭和天皇にしても、韓国ではいろいろ批判されますが、戦争責任は自分にあるとアメリカに対して話したというのを知ったときは、本当に驚きました。戦前の日本のトップとして責任を取ろうとしたわけですよね。しかも死刑になるかもしれないのに。あれなら国民の感情をまとめる力になりますよ。韓国では歴史上、国のトップが真っ先に逃亡することが何度かありました。それとどうしても比較してしまうんです」

天皇の韓国訪問を望む声も

 昭和天皇がかつての韓国社会でどのように評価されていたのか、詳しくは知らない。だが、少なくともこの10年ほどは、今上天皇に対しては好意的である。その背景には、日本政府よりも強く世界平和を訴えているという韓国社会の理解がある。その一端が、ここで紹介したコーヒーショップのオーナーの発言に現れているのだろう。しかし、天皇は国民を政治的に統合しているわけではない。それは国民に寄り添うこととは明らかに異なる。韓国社会がその点をどれだけ理解しているのかは、実に疑わしい。

 韓国政府やその関係者の間からは、天皇陛下の韓国訪問を望む声も聞こえてくる。次期大統領が誰になろうと、日本との良好な関係を模索しているという信号を出すために、そうした声は今後も出てくるだろう。

 だが、やはり現在の韓国における天皇観は、日韓両国間の外交的葛藤の枠の中で形成されているので、いかんせん政治的である。その政治的視線を捨てられたときにこそ、天皇陛下が韓国を訪問できるかどうかの議論が可能になると思うのだが、実感としては、それこそ韓国にとっての難問であるに違いない。

(平井 敏晴)