バイデン氏の頭の中は米英豪でいっぱい

 ジョー・バイデン米大統領は9月21日、国連総会で一般討論演説した。

 バイデン氏は、インド太平洋地域で軍事力を拡大している中国を念頭に、「米国はいまも今後も最も重要なインド太平洋に焦点を移す。国際問題の解決を加速させるために同盟国やパートナー国、国際機関と協力する」と述べた。

 就任以来、初めての国連演説でも「米国第一」を掲げたドナルド・トランプ前大統領との違いをアピールした。

 ところが対中戦略では、トランプ前政権とあまり変化はなく、むしろ実質面では背後に控える軍事安全保障ブレーンが立案する強硬戦略を着実に実行しているかに見える。

 そのバイデン米大統領が中国のインド太平洋で展開する米国・同盟国との軍事力強化に本格的に動き出した。

 9月24日にはワシントンで日米豪印4か国の枠組み「クアッド」初の対面首脳会議が開催される。

 それに先立ち、米国、英国、オーストラリアの3か国首脳が9月15日、インド太平洋地域の安定に向けた新たな安全保障の枠組み、「AUKUS」を構築すると発表した。

 米英豪は英語という共通言語、アングロサクソン文化・風習を共有する「従兄弟同士」。第2次大戦以来、結束を保ってきたオールド・パートナーだ。

 その3国が「中国の脅威」に対抗して新たなアングロフォン・デモクラシー(英語を第一言語とする民主主義国家)同盟関係を結んだのだ。

 米英豪首脳の共同声明では、「情報や技術の共有を進め、安全保障・防衛関連の科学技術、産業基盤、サプライチェーンの3か国統合を図る」と謳い上げ、軍事面でもオーストラリアを巻き込んだ対中戦略を構築した。

 オーストラリアはその地理的環境もあり、これまで中国とは緊密な経済通商関係を維持してきた。その一方で安全保障面では米国とは1951年以降、米豪ニュージーランド安全保障条約機構(ANZUS条約)*1を堅持してきている。

 まさに「二股外交」だ。「中国の脅威」が絵に描いた餅の時は米国もある程度黙認してきた。

 ところが今や中国の脅威は「これから未来永劫続きそうな状況になってきた」(豪有力紙ジャーナリスト)。

 オーストラリアの政財官界のエリートの多くが従来の対中外交の変更を求め出した。豪スコット・モリソン政権の対中、対米アプローチは国民からも支持されているのだ。

*1=1951年、豪ニュージーランド、米豪が別々に締結した集団安保に関する拘束力のない協定。86年ニュージーランドが領海内に非核地帯を設けたため、米艦船の寄港を認めず、条約を脱退。2012年に寄港禁止を和らげたため緊張関係が緩和、2007年に条約の主要分野を再開している。