この動きは明らかに、東南アジアでの中国の動きを封じる意味合いがある。

 フィリピンは過去数十年、軍事力が不足してきただけに、米国が改めて軍事的な防波堤になることを約束したことで、「中国のちょっかい」を未然に防ぐことになる。

 前出のチャン氏はこう記している。

「フィリピンの防衛力は徐々に復活してきている。同国の主張が国際的に認知され始めてきたこともある」

「米国の中国に対する戦略的な感情が変化してきたことで、(中国の攻撃の)抑止力が回復する機運が生まれている」

 米ロイド・オースティン国防長官も今夏、米比両国間に70年もの間受け継がれてきた相互防衛条約は、いまの中国を十分に牽制することができると述べている。

「米比両国は気候変動の危機からコロナのパンデミックまで、様々な課題に直面している。そうした中で、米比同盟は強固で回復力があり、インド太平洋の安全と繁栄のために不可欠であり続けるだろう」

 中国はフィリピンや台湾、ブルネイ、マレーシア、さらにベトナムが主張する南シナ海の領有権や海洋権益を主張しているが、米国は「完全に違法」との立場を崩していない。

 ドゥテルテ大統領は当初、中国との対決に消極的な態度がみられたが、フィリピン国内での対中強硬派の力が高まるにつれ、南シナ海での領海権は交渉の余地がないとの考えに変わってきた。

 同大統領の次の言葉がいまのフィリピンの国際的立場を象徴している。

「フィリピンが大国の影に隠れて判断し、行動する時代は終わった」

(堀田 佳男)