クリミアは、2014年にロシアが電撃的に奪取した後、ロシアとの連絡線を保つため、黒海とアゾフ海を隔てるケルチ海峡に橋(クリミア大橋)をかけています。今回の戦争では、このクリミア大橋が、クリミアからへルソンなど南部ウクライナに侵攻するロシア軍の補給線として大きな役割を負っています。

 もしもこのクリミア大橋を落とされると、ロシアはクリミアへの補給を海路に頼るしかなくなります。しかし、ウクライナが対艦ミサイル「ネプチューン」を開発配備したため、海路ではかなりリスクの高い輸送を行わなければなりません。海路による補給は、クリミア防衛戦で大きな障害となるのです。

 もちろん、ロシアはクリミア大橋を厳重に防護するでしょう。しかし、ミサイル巡洋艦「モスクワ」が撃沈されたように、ロシアの行動には隙が多くみられます。ウクライナ軍がペレコープ地峡に迫る状況では、クリミア大橋を破壊する可能性も十分に高くなると思われます。

「軍事的奪還」発言の意図は?

 上で述べたように、可能性としてはウクライナがドネツィク・ルハンシクおよびクリミアの軍事的奪還に至る可能性もあり得ます。ですが、まだとても具体的に奪還を考えられる段階ではありません。

 ということは、マリャール国防次官やブダーノウ国防省情報総局局長の発言は、政治的な意図が大きいと見るべきです。可能性としては2つの意図があると思われます。恐らく両睨みの発言でしょう。

(1)領土割譲圧力に対する牽制

 5月13日に、キーウインディペンデント紙が報じたところによると、フランスのマクロン大統領は、プーチンの顔を立てる形で講和を結ばせるため、ゼレンスキー大統領に対し領土割譲を認めるように進言したとのことです。