なぜ大騒ぎするのかと、米政府元高官

 北京の米大使館に勤務したことのある元政府高官で、安全保障問題専門家のJ氏は一連の動きをこう見ている。

「何でそんなに大騒ぎしているのか、私には理解できない。アントニー・ブリンケン氏の訪中延期はあくまでも米国の国内政治、国民感情に配慮しての決定だ」

「予定通り訪中すれば米議会の共和、民主両党の反中国、嫌中国派議員から激しい批判を浴びるのは目に見えていた」

「現に下院共和党は、バイデン政権の対応を非難する(法的拘束力のない)決議案を上程するようだが、これは今回の事件を政争の具にしようとする大衆迎合主義に過ぎない」

「まともな対中外交の在り方を真剣に考える論議に欠けている」

(https://www.axios.com/2023/02/04/china-balloon-house-gop-investigation)

(https://www.washingtonexaminer.com/news/house/house-republicans-mull-resolution-denounce-biden-chinese-balloon)

「米メディアも気球撃墜後、潮が引くようにこの事件についての報道は収まっている」

「レイトナイト・ショーではこの事件をネタに面白可笑しく米国のバカ騒ぎを風刺している」

「確かに、万一、ブリンケン氏が訪中を敢行すれば、米メディアはこの偵察気球問題だけに集中して報道するだろう」

「2018年10月以来の米国務長官訪中の目的や米中間の重要な問題に対する焦点がぼけてしまうのは必至だ」

「外交とは、往々にして国内状況で本来の外交ができなくなってしまうことがある。米一般市民は日頃、外交とか国防とか安全保障上のインテリジェンスなどに関心はない」

「だがスパイと聞き、領土、領海、領空が外国に侵犯されたとなるとカッカする。今にも敵がせめて来るような反応を示す」

「だから本来ならば、米政府は偵察気球ごときが領空侵犯しても公表を避けようとしただろう」

「偵察気球と言えば、高齢者が思い出すのは旧日本軍による気球爆弾だ。オレゴン州の山中に落ち数人が死傷した。だが米軍は一切公表を避けた」

「その理由はやたらに危機感をあおらないことと、旧日本軍に気球が米本土に到達したことを知らせない軍事上の理由があった」

(https://www.smithsonianmag.com/history/1945-japanese-balloon-bomb-killed-six-americansfive-them-children-oregon-180972259/)