偵察衛星を中国は250基、米国は123基

 J氏はさらに続ける。

「中国に対しては、知的財産侵害とか対米過剰輸出、在米中国人スパイ問題、最近では台湾侵攻の可能性とかで、米国民は中国を目の敵にしているという下地が出来上がっている」

「偵察気球事件はそんなときに起こった。主流メディアもこれに飛びつき、反中派議員たちは煽りに煽った」

「しかし冷静に考えると、確かに中国は毎日、数百の偵察衛星*1を米国本土上空に飛行させている。米国も中国やロシア上空に偵察衛星を飛ばしている」

「中国の偵察気球による米領空侵入はトランプ前政権までに少なくとも3回、バイデン政権初期にも1回あった。過去数年間では五大陸にまたがる国々の上空で目撃されており、東アジアの国も含まれているという」

*1=米国防総省によると、中国は偵察衛星260基を保有、一方米国は123基保有。偵察衛星には「周回低軌道」(LEO)と「地球静止軌道」(GO)とがある。前者はより至近距離から写真撮影できるが、90分で地球を1回りするため撮影時間が短い。後者は超時間にわたり標的を継続的に撮影できるが、写真の鮮明さに欠ける。

(https://www.bbc.com/news/world-asia-china-64508086)

 J氏はさらにこう述べる。

「外交や国防には潜在的敵国だけでなく、同盟国や友好国に関するインテリジェンス情報を収集・分析することが不可欠だ」

「現に米国はイスラエルとスパイ行為でひと悶着起こしている」

(https://www.spytalk.co/p/frenemies-us-israel-spy-strains-emerge)

「スパイ行為は双方ともよほどことがない限り見てみないふりをする。それがばれると、今回のようなことになる」

「今回は、モンタナ州に住む民間人が見つけて動画にし、それをブルームバーグが特報したことで国防総省も公表せざるを得なくなったと保守系評論家は主張している」

「しかし、だからといって止めるわけにはいかない」

「偵察気球は監視カメラやレーダーセンサーを容易に装備できるし、安価だが、標的にされやすい。米国の偵察気球にはアエロスタッツ(Aerostats)という赤外線カメラが搭載されている」

「気球は確かに衛星よりも低空で比較的長時間、局地的なデータ収集ができるメリットはある。ハイテクの進歩で米国は偵察衛星やドローンに重点を置いている」

「米国は偵察気球を2004年のイラク戦争やアフガニスタン戦争では頻繁に使った。局地的な敵の動きをとらえるには気球は最適だった」

「今でもメキシコ国境周辺ではドローンと併用して飛行させ、違法移民の監視を行っている」