見つかるための気球だったのか?
それにしても4年4カ月ぶりの米国務長官の訪中(それは米中首脳会談の露払い的な意味合いを持っている)、その10時間前に偵察気球が米大陸に到達することが分かっていて(?)飛ばした中国の意図は何なのか。
米政府内外の専門家たちの間では中国が意図的に気球が見つかるようにしたとの受け止めが広がっている。
米シンクタンク「ハドソン研究所」のパトリック・クローニン・アジア太平洋安保部長はこう見ている。
「中国は偵察衛星を使って、米国内の大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地やその他の戦略拠点を継続的に偵察している」
「したがって、偵察気球はあえて飛ばさなくてもいいような大胆な振る舞いと言っていい」
「ブリンケン国務長官が訪中して習近平国家主席に会う前に米国民の注意を引こうとする心理的策略だと、私は見ている」
(https://economictimes.indiatimes.com/news/defence/chinese-spy-balloon-meant-to-test-us-counter-surveillance-says-analyst/articleshow/97617974.cms)
なぜ、そんな必要があるのか。前出のJ氏は、別の見方をしている。
「偵察気球の飛行高度が領空圏に誤って落下したのか、何らかの操作ミスだったのではないのか」
「中国も見つかれば、せっかく雪解けムードの兆しが見える米中関係の和解の動きをぶち壊すのを分かっていたはずだ」
「あるいは、習近平氏が掌握している中国共産党と中国人民解放軍との間で対米外交をめぐって何らかの意見対立があり、中国軍指導部の中にこの時期に偵察気球の飛行を命じた者がいた(?)のか」
「あるいは、独裁体制を確実にしていた習近平氏の進めようとする対米外交に反旗を翻したのか」
「まさに中国の打ち上げたアドバルーンであることには変わりはない」
いずれにせよ、ブリンケン訪中は、初夏までは実現しそうにない。ということは、バイデン訪中を前提とする米中首脳会談も大幅に遅れそうな雲行きになってきた。
(2001年4月、米海軍電子偵察機「EP-3E」が中国人民解放海軍の「瀋陽 J-8II」戦闘機と海南島沖(国際水域)で空中衝突、米機が海南島に緊急着陸した事件(中国側に行方不明者)では、謝罪したものの、機体や乗組員の返還交渉にも手間取り、コリン・パウエル国務長官(当時)が訪中するのには事件発生後、4カ月もかかっている)
(https://en.wikipedia.org/wiki/Hainan_Island_incident)
(高濱 賛)