「70代後半の両親が実家で暮らしています。来年度から『75歳以上の医療費負担が1割から2割になる』と聞きましたが、両親とも最近は体力も衰えてきたというのに、負担が増えるなんて……」

こう話すのは、東京都に住む50代の主婦。今年6月に成立した医療制度改革関連法により、一定の収入がある75歳以上の医療費負担が来年秋までには1割から2割に引き上げられることに。

対象になるかどうかは、世帯の『課税所得』と『年金収入+その他の所得額』の2つの基準によって判定される。社会保険労務士の石田周平さんの解説のもと、「2つの基準」を詳しく見ていこう。

「『課税所得』の額は、毎年6月ごろ各市区町村から届く『住民税額決定・変更通知書』に記載されています。自治体ごとに表記は異なりますが『課税総所得金額』や『課税標準額』の欄で確認することができます」(石田さん・以下同)

この欄の金額が「28万円以上」だと、2割負担の対象となる可能性がある。

続いて、『年金収入+その他の所得』の額の見方は?

「『年金額』をチェックしましょう。これは日本年金機構からやはり6月ごろに届く『年金額改定通知書』に記載されています」

年金額改定通知書は「ねんきんネット」に登録している人であればオンラインでも確認できる。通知書にある「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の合計額が個人の「年金額」だ。ただし、「年金以外の収入」がある場合は、「年金額」にそれらを加算した合計額となる。

「給与収入がある場合は給与所得控除額を、事業収入がある場合は必要経費をそれぞれ差し引いた『所得額』を加算します」

その合計額が、75歳以上の単身世帯では「200万円以上」、2人以上の世帯であれば「320万円以上」だと「2割負担」の対象になる。

ただし、2つの基準を満たし、2割負担の対象となっても、“負担倍増”とはならないケースも。石田さんは、「今回は緩和措置が設けられている」と補足する。

たとえば1カ月の医療費が「7万円」のケースで考えると、現状の負担は1割の「月7,000円」。これが2割負担となると「月1万4,000円」になり、一気に「月7,000円」もの負担増になってしまう。

「しかし、新制度移行から最初の3年間は“増額する負担の上限額は月額3,000円まで”に抑えられるため、『(現在の1割負担)7,000円+3,000円』の実質負担は合計月額1万円で済むのです」



【この先も医療費負担増の流れは避けられない】

さらに、あまり知られていないこととして、石田さんは次のことを教えてくれた。

「後期高齢者にも医療費の『自己負担限度額』があり、窓口で払いすぎた医療費は還元されるのです。現在1割負担の人のうち、今回から引き上げ対象になる人でも、月の自己負担限度額は、個人単位で『1万8,000円』です(ただし外来診療の場合のみ)。いったん窓口で医療費を支払い、後日、広域連合が計算した療養費の申請書が送られてきますので、それに記入して提出すれば、後から差額が振り込まれます」

とはいえ、緩和措置や高額療養費制度などで軽減される手段を差し引いても、厚生労働省によれば実質の負担増は1人当たり「年間で2万6,000円」にのぼるという。

今後はわれわれの医療費負担が増えることこそあれ、減ることはまずないと考えられるでしょう。具合が悪いときに迷いなく受診できるよう、日常的な健康を心がけましょう。