熱中症に備える保険が注目を集めています。代表的なものは、キャッシュレス決済のPayPayアプリから加入する「熱中症お見舞い金」という保険で、2022年から熱中症シーズン限定で販売しています。2024年は4月22日から受け付けを始めると、1週間で約4千件の申し込みがあったといいます。

熱中症お見舞い金は、熱中症に特化した保険です。熱中症になって点滴治療を受けたら「治療保険金」、1泊2日以上の入院をしたら「入院保険金」が受け取れます。

保険期間は2種類あります。1つは月単位で加入する「月額型」。「お手軽プラン」だと保険料は月200円で治療保険金が5千円、入院保険金が1万円です。昨年も加入した人には保険料が10円引きになる「リピート割」があります。

もう1つはイベントなどに合わせて1〜7日までの期間を選んで加入する「期間選択型」。保険料は1日100円〜7日170円で、治療保険金が1万円、入院保険金が3万円受け取れます。

特徴は手続きが簡単なことです。加入も保険金の請求もPayPayアプリからでOK。特に保険金の請求は病院の領収証と診療明細書をアップロードするだけ。

2023年は記録的な猛暑で、熱中症での救急搬送は2022年より約2万人増えて9万人超でした(総務省)。今年も猛暑が予想されるので、不安な気持ちはわかります。

■安い保険料でも保険会社は損しないように設計されて

ですが、保険の本質は自分の支払い能力を超える事態に備えることだと思います。仮に大黒柱が亡くなったら、今の貯蓄では子どもの教育費がまかなえないから死亡保険に加入する、などです。熱中症保険は保険の本質からずれている気がします。熱中症の治療費を払えない人はあまりいないでしょう。

最近はスマホアプリで簡単に安く加入できる保険がたくさんあります。アウトドア、ゴルフ、スキー・スノボなど、どれも100〜300円という安い保険料のため、「それくらいなら加入したほうが安心」と思う人が多いのでしょう。

ただ保険に加入しても、病気や事故に遭わないわけではありません。万が一の際に保険金が下りるだけ。保険が解決してくれるのはお金の問題だけなのです。

加入を検討する際はまず、お金の心配が必要かを考えましょう。

次に、なぜ保険料が安いのかも考えてください。保険会社は決して損はしないように保険を設計しています。つまり、安い保険料でも保険会社が損しないほど、保険金を支払う事例が少ないのです。 先述の熱中症による救急搬送9万人超も日本人全体の0.75%。確率が高いとはいえません。

さらに、医療保険などでも熱中症で入院すれば入院給付金が出るものが多いです。新規加入の前に、すでに加入済みの保険のご確認を。

円安や物価高が家計を襲う昨今、わずか数百円もムダにできません。保険を頼る前に、適切なエアコンの利用や水分補給など熱中症にならない対策をとりましょう。