「ドラマ『カミさんの悪口』に出演したのは27歳のとき。’83年にアイドルデビューしたものの、生放送の番組で放送禁止用語を口にしてしまい、テレビ界から干され、アイドル路線からも脱落し、長らく低迷していました。でも、’90年代に入ってから『進め!電波少年』や『DAISUKI』(ともに日本テレビ系)など、バラエティ番組のレギュラーを持つことができ、“なにか面白いやつがいるぞ”と思ってくださったみたいです」

本格的なドラマに出演したのは初めてだったと振り返るのは、松本明子さん(57)だ。

「しかも、売れっ子の俳優しか出られないような『東芝日曜劇場』です。ワクワクもすごかったですが、それ以上に緊張しました。出演するのはベテランの方たちばかりですから」

大スターの田村正和さんは、スタジオでもオーラ全開だった。

「撮影の合間、正和さんはスタジオの片隅に置いてあるロッキングチェアに足を投げ出して、台本を確認したりしていました。正和さんからはいつもいい匂いがするから、近くに吸い寄せられてしまうんです。でも、気安く話しかけることはできません。だから、じっと隣にいたのですが、正和さんはその状況に耐えかねたようで、照れた様子で『ちょっと恥ずかしいから、あっちにいってくれるかな』なんておっしゃっていました(笑)」

通常、俳優はスタジオに来てから衣装に着替え、メークをするというが、田村さんは自宅でメークを済ませ、その日の衣装を着てスタジオに入り、翌日の衣装を持って帰宅したという。

「だからスタジオにいるあいだは、“田村正和”ではなくて、ずっと“小泉肇”なんです。プライベートは全く見せず、お弁当を食べるのも、トイレに行くのも見たことがありません」

一方、田村さんの妻役の篠ひろ子は、寒いロケのために手袋や膝掛けをプレゼントしてくれたり、NGを出しても「そんなの全然気にしなくていいのよ」と緊張をほぐしてくれたりしたという。

「お食事に連れていってくださったときには、あの伊集院静さんもいらっしゃったんです!」

不倫相手役だった舞台出身の橋爪功は、演技には厳しかった。

「リハーサルのときに、カメラワークに合わせて立ち位置や体の向きを決めたりするのですが、本番になるとうまくいかないものだから『ばかやろー。ダメだな、お前は!』なんて怒られました。でも、ちゃんとできたときはご褒美に10円をくれたんです(笑)」

同ドラマの出演を機に、女優の仕事も増えた。

「’90年代に私の芸能人生の全盛期を迎えられたのも、ベテラン俳優に囲まれた現場を経験したからなんでしょうね」