「テレビに出て目立ちたくて子役になりましたが、当時、日本全国の子役全員が憧れていたのが『あばれはっちゃく』。まさか自分が主役の5代目・桜間長太郎に抜擢されるなんて思いもしませんでした」

こう振り返るのは、純烈のリーダー・酒井一圭さん(48)。

「保育園のとき、お遊戯やお芝居が尋常じゃないくらいできたから児童劇団に入ったのですが、劇団の子供たちは『ハイ、泣いて』と指示されると簡単に泣くことができる天才的な子ばかり。早々に挫折しました」

サボってばかりいる酒井さんを見かねた劇団スタッフが勧めたのが、“あばれはっちゃく”のオーディションだった。

「でも、当然ながら長太郎役は落ちてしまいました。その後のクラスメート役のオーディションでは、ふざけて投げ合っていた使い捨てカイロが破れて砂鉄まみれに。これはダメだとあきらめました」

ところが、そのヤンチャぶりが逆に評価され、空席のままだった長太郎役が回ってきたのだ。

「一度落ちた主役に抜擢されたから、『逆転あばれはっちゃく』というタイトルになったそうです」

忘れられないのは、第1回のシーン。

「転校してきたボクが席につくときに足を引っ掛けられ、つまずいてクラスの女の子のほっぺにキスをするシーン。何度も何度もNGを出して、女の子には悪いことをしました(笑)」

クラスメート役には、人気ドラマ『うちの子にかぎって…』(TBS系)に出ていた子も多かったという。

「自分に経験がないことを自覚していたから、主役だからと勘違いすることはありませんでした」

自分を客観視して、撮影現場でも妙に大人びていたという。

「だから、最終回のとき、父親役の東野英心さん、母親役の久里千春さんからは『長太郎、もうちょっと懐いてもよかったんじゃない。歴代4人の長太郎は、肩や膝にのってきたんだよ』って言われ、“もっと甘えたかったな”と少し後悔しました」

ドラマ撮影中は学校に通うことができず、成績表には棒線が引かれていた。

「成績で1すらつかないんです。しかも、長太郎を演じたことで、全国から写真を撮りに来たり、けんか自慢が家に来るんです。さすがにこれはまずいと、子役をすっぱりやめて普通の生活に戻りました。ただ、このとき体験した“夢は叶う”ということは、純烈の活動で十分に生かされています」

『逆転あばれはっちゃく』(テレビ朝日系・1985年) “あばれはっちゃく”とあだ名されるガキ大将の桜間長太郎が主人公の人気ホームドラマシリーズの5作目。「父ちゃん」「母ちゃん」が「父さん」「母さん」に変わり、東野英心が演じる父親の名ゼリフ「父ちゃん、情けなくて涙がでらあ」が聞けなくなったのが少し残念。

【PROFILE】 さかい・かずよし 1975年、大阪府生まれ。子役としてデビューするがほどなく学業に専念。1994年に芸能活動を再開すると、「スーパー戦隊シリーズ」やドラマ、映画で活躍。2007年、歌謡グループ純烈を結成し、2010年にメジャーデビューを果たした。