音声メディアのラジオで、音に様々な効果をもたらす「エフェクト」について、普段はラジオの裏方を務める技術スタッフが、ラジオ番組のなかで解説しました。

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「GarageBand」などの音楽制作ソフトを使えば、スマホやタブレットで、誰もが無料で本格的な音楽を作ることができます。またDTM(デスクトップミュージック=パソコンを使って、音楽や楽曲を作る行為の総称)や動画配信、SNSなど様々なところで、多くの人が映像・音楽のクリエーターになることができます。

 そんなクリエイティブの質を、もうワンランクアップさせてくれるのが「エフェクト」です。

 エフェクトは、生放送から、録音番組の編集など、「ラジオミキサー」の仕事をしていると切っても切れない存在です。いろんなコーナーやライブ演奏、ラジオドラマなど、エフェクトがいろいろな場面を盛り上げてくれます。「ジャン!」「ピンポーン!」などの効果音のことをサウンドエフェクト(SE)と言いますが、“リバーブ”と呼ばれるような、音の質や聞こえ方に変化をつけるエフェクトを紹介しましょう。

 まず、リバーブ(Reverb)とは、残響音を加える加工です。ボーカルや楽器に使うのはもちろん、放送現場では、よくコーナーのタイトルコールや、ドラマのときには、回想シーン、「いい湯だなぁ……」というせりふなど、風呂に入っているシーンなどに使います。

 神戸のラジオ局「ラジオ関西」では、各スタジオに外付けのエフェクターが設置されていますが、最近はデジタルミキサーに、エフェクターが内蔵されたものが多いです。

 リバーブの設定にもいろいろあって、 「Decay」(音の減衰)や「Reverb Time」(残響時間)という設定で残響音の長さをかえたり、「Predelay」という設定では、残響が始まるまでの時間を遅らせて、元の音をハッキリ聴こえさせることができます。

マルチバンドリミッター、コンプレッサー

 昔のレコードを聴くと、深いリバーブの曲が多いように感じる人も多いでしょう。サイモンとガーファンクルの「スカボローフェア」などは残響音が長めです。またジョン・レノンのソロシングル「インスタントカーマ」もリバーブの他に様々な加工が施され、聴くと驚く人もいるかもしれません。

Cubase編集画面

 音楽制作ソフトでいうと、無料で使える「GarageBand」の他に、「Pro Tools」、「Cubase」 、「SONAR」、「Logic」などのソフトが有名です。このソフトを使えば、他の機材を使わずにパソコンの中で、声や楽器に様々なエフェクトをかけることができます。

Cubase編集画面

 リバーブはもちろんですが、ギターの音のような「歪(ひず)み系」と言われるディストーション(distortion)。「Auto-Tune」などのエフェクトでは“ケロケロボイス”と呼ばれる、エレクトロなサウンド表現を行うことができます。

 ラジオ放送の現場では、このようなエフェクトを使ってかっこいいジングルを作るのが醍醐味ですが、ラジオ局で重要な役割をしているのが、音圧調整をする「リミッター(limiter)」というエフェクトです。

 ラジオ局ではマルチバンドリミッターとプリエンファシスを備えたオーディオプロセッサ―で、リスナーが聴きやすい音作りを行っています。マルチバンドリミッターで変調度を効率的に高め、聴きやすく、エリアを拡げる効果を狙います。 プリエンファシスでは、 ラジオの伝送特性、受信機の特性で低下しがちな高域の周波数を事前に増幅し、受信側の周波数特性を改善します。変調度とは搬送波と信号の比のことで、AMラジオ関西の場合、 搬送波は558kHz、信号は番組や音楽の音声の情報になります。搬送波はトラック、信号は荷物に例えられます。変調度が大きいということは、たくさん荷物を載せて効率よく配送できているイメージになります。 ラジオでは変調度を平均的に大きくしつつ、100パーセントを超えないようにすることが大切になります。

 変調度が大きいとラジオリスナーに高い音圧で番組を届けることができ、 特に遠く離れたリスナーは聴きやすくなり、結果的に聴取可能なエリアが広がることになります。 しかし変調度が100パーセントを超えるとラジオでは音声がひずんでしまったり、 他局に混信などの影響を与えるなどの悪影響が出てしまいます。

 個人の音楽制作や、動画配信から、プロの放送現場など、様々なところで使われているエフェクト。気になる人は、深くて広いエフェクトの世界を探ってみては。

※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』2021年5月16日放送回より