大阪・関西万博まで500日。

 会場の人工島・夢洲(ゆめしま)で、世界の仲間たちの”笑顔の輪”のデザインを仕掛けるアーティストがいる。

 「MERRY PEACE RING」分断された世界、もう一度つなげよう。

 アートディレクター・水谷孝次さん。世界に住む子どもたちの笑顔をプリントした傘をアートとして表現す「MERRY PROJECT (メリー・プロジェクト)」 を主宰する。このプロジェクトは、水谷さんが1999年に立ち上げた。これまでに世界各国の紛争地や被災地など35か国で5万人以上の人々の笑顔とメッセージを取材してきた。
 2005年には愛知万博(愛・地球博)のメインコンテンツとして「MERRY EXPO」を実施、2008年には北京オリンピック開会式の演出で、これらの「笑顔の傘」が披露された。

 水谷さんは1980〜90年代、大手航空会社やファッション、食品メーカーのヒット商品の広告ポスターやパッケージ、 プロ野球チームのロゴマークなどのデザインを手がけ、日本の広告界になくてはならない存在だった。その経験に裏打ちされた発信力を今、世界が正面から向き合うようになったSDGs(持続可能な開発目標)に注いでいる。

 水谷さんは「世の中を、地球そのものをデザインする時代。みんなの笑顔をデザインしたい」と話す。

 「MERRY PROJECT」と関西との結びつきは強い。阪神・淡路大震災直後からチャリティポスターをデザイン。震災から6年を迎えた2001年以降からずっと、被災地・神戸にも笑顔を届け続けている。

 水谷さんが、ラジオ関西の取材に対し、「2025年大阪・関西万博についての思い」を語った。

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 今、私たちが暮らす地球上には、紛争・環境破壊、差別など、さまざまな社会問題がある。

 2030年に向けて、SDGsを達成すること。しかし、今のままでは達成できないと言われている。
こんな時代だからこそ、2025年大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現する大きな意味がある。
 関西から、今、世界で起きている社会問題の解決に向けて、私たちができることを考えてみよう。

 「MERRY PROJECT」は2021年3月、万博1500日前イベントとして、大阪・心斎橋から大阪城まで、万博の機運醸成のためのクリーンアップと笑顔の傘のパレードを開催。
 2022年3月、万博3年前を迎えたドバイ万博では、笑顔の傘のパレードから笑顔の凧まで、様々な活動を展開した。

 しかし、ドバイ万博会期中の2月24日に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。戦時下の中で行われた万博でもあった。

 戦争が始まると、ウクライナ館の中は、世界中の人々からの「平和」と「自由」を求めるメッセージを、参加者が紙に書いて壁に貼り付けていくプロジェクトがスタート。
 日を追うごとに1階から4階までの壁が埋め尽くされ、それだけで「コミュニケーションアート」になっていた。

 ウクライナ館に入った瞬間、胸がいっぱいになった。

 笑顔を通じて世界平和を願う「MERRY PROJECT」として、メッセージとともに折り鶴を貼ると、背中越しから「Thank you」と、ウクライナ人の母子に声をかけられた。
 この母子は、日本の折り鶴の意味を知っていたのだ。「平和を願ってくれてありがとう」という深い感謝の気持ちを込めていた。
 そして私は、「2025年大阪・関西万博でまた会いましょう」と言って別れた。

 ドバイ万博の最終日、このメッセージカードは数万枚を超えたといい、今後、前線の兵士やウクライナ国民を勇気づけるために活用されるそうだ。

 そして2022年7月、万博1000日前には、大阪・千日前商店街や千里・万博記念公園などでPR。

 万博2年前の2023年4月には大阪市・住之江区の大和川周辺で、笑顔のSDGsドレスのファッションショー、川辺の大クリーンアップなど大きく盛り上がった。

 10月には万博500日前に先駆けたイベントを神戸で実施したが、この時、パレスチナ・イスラエル紛争が勃発。
 イスラエルとハマスの対立。現在も空爆が続き、多くの子供たちが犠牲になっている。

 かつてチェチェン紛争で、クレムリンが封鎖された2004年8月から9月にかけてロシアを訪れた。
その際、戒厳令が敷かれるモスクワで、「こんな時だからこそ」、MERRY PROJECTの活動が大切という多くのメディアのサポートもあって、現地で子供たちの笑顔を撮影した経験がある。

「笑顔はみんな美しい。子どもたちの笑顔は未来への希望。世界は1つ、1つの夢。それは平和です。希望ある子どもたちの笑顔を未来につなげるためにもみんなでアイデアを出し、協力して地球を進化させていかなければいけない」と訴えた。

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 そして今、建設費350億円が話題になっている万博の巨大なシンボル「大屋根(リング)※」。この大屋根(リング)は 「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表すシンボルだ。

 今のままでは、ただの無駄遣いと言われても仕方がない。このコンセプトを体現する「アクション」が必要だ。

 私は今、この大屋根リングを使ったアイデアを考えている。

 みんなで笑顔で協力して、一つのリング・輪になる時。コロナ禍で分断された「世界とのつながり」を体験する場を作りたい。

 最初は短くてもいい。毎日、毎日少しずつ隊列が伸びて、最後にはリングを1周できるような数の人たちが笑顔で”ひとつ”につながることを目指して。

 私は、世界を、笑顔でひとつにしたい。

MERRYリング
平和のリング
世界のリング
笑顔のリング
幸福のリング

 このリングを1970年大阪万博の太陽の塔に変わる、新しいシンボルにしていきたい。世界の平和・世界の笑顔の象徴にしたい。
 このリングから、世界が新しく変わる。新しい笑顔で幸せな世界になる。

 その1歩は、大阪・関西万博のリングから始まると思っている。

 ドバイ万博の会場で、多くの世界の人たちと笑顔の交流・笑顔のコミュニケーションを体感した。
 UAE、シリア、パキスタン、ヨルダン、レバノン、ルーマニア、インド、エジプト、フィリピン、ウクライナ、イラン、アルジェリア、イエメン…. 会場内の公園には界中の子どもたちが大集合した。

このリングを1970年大阪万博の太陽の塔に変わる、新しいシンボルにしていきたい。

 撮影しても撮影しても、列が短くならない。どんどん撮影してほしい子どもたちで、列が長くなっていく。

「次は私!」「次は僕!」子どもたちの笑顔が、笑顔を呼び、笑顔の輪を作っていく。笑顔は世界共通のコミュニケーション。
 このコミュニケーションこそが、万博での最高の体験であり、最高の瞬間である。万博会場に来ている人たちは、皆、それを楽しみに来ている。

 普段会うことができない、接することのない、他の国の人とのコミュニケーション。
 これが万博の魅力であり、この笑顔のコミュニケーションは止めることができない魔法だ。この笑顔の体験を大阪・関西万博でも実現させたい。

 2025年の万博の開催地・大阪は「笑いの街」。

 「笑顔」は大阪の文化。笑顔の力は、人々を元気にするし、相手を笑顔にすることは”日本の心=おもてなし”にもつながる。

 私の夢は「世界にいる78億人の人々を笑顔にすること、それは地球を笑顔にする」こと。2025年に向けて、世界中の人々を笑顔でおもてなしできるように、MERRY PROJECTとしても、笑顔で気運醸成して、盛り上げていきたい。

 すべての戦争が一刻も早く終結し、世界中の子供たちの笑顔の数が少しでも増えるように。

 この大阪・関西万博のリングから、新しい「笑顔の幸福論」をスタートさせたい。

 開幕まで500日、世界の多くの問題を解決する一歩にしたい。「MERRY EXPO 2025」を実現するために。     

                                       水谷孝次           

※大屋根(リング)は、建築面積(水平投影面積)約60,000㎡、高さ12m(外側は20m)、内径約615mの世界最大級の木造建築物となる。

◆記事中の画像提供は2025年日本国際博覧会協会・MERRY PROJECT・ラジオ関西コンテンツニュース局