医学研究に役立てるため、故人の遺志により無条件・無報酬で提供された男性の遺体(献体)について兵庫医科大学(兵庫県西宮市)が、遺族に連絡なく火葬し、約6年半にわたり返還を怠った問題で、兵庫県宝塚市に住む遺族が精神的苦痛を負ったとして同大学を相手に損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は27日、「大学側の遺骨返還業務に関する管理体制がずさんだった」などとして150万円の支払いを命じた。

 判決などによると、2014年2月、82歳で亡くなった男性は生前の希望通り兵庫医科大に献体した。兵庫医大のホームページには、手続きについて「献体の解剖、火葬の際は遺族に文書で連絡する。遺骨返還までに約1年半〜3年を要する」と記されていたことから、遺族はしばらく連絡を待っていた。

 それから6年半経った2021年10月、長女(66)が大学側に問い合わせたところ、はじめは「わからない」と答えるのみだった。その数日後、解剖実習は2015年1月に実施され、その年の4月に火葬、その後、大学の遺骨安置室に置かれたままになっていたことが判明した。

 大学は遺族に「2014〜16年、当時の担当者(すでに退職)が規定の業務手順を逸脱し、遺族への通知を怠った。後任の担当者に十分な引き継ぎをしていなかった」などと弁解しており、遺族は大学側の体制を問題視していた。

 神戸地裁は判決で、大学側は▼男性の遺骨が遺族への返還対象だったにもかかわらず、記録には「胴骨のみ永代供養」と誤って入力され、それを基に、永代供養の遺骨を安置する区画に配置するなどした点
▼遺骨安置室のデータ入力後にダブルチェックする体制がなく、▼遺骨とデータを照合するなどの点検作業を定期的に行わなかった などと指摘した。

 そのうえで、「事務上の誤りがあったにもかかわらず、それを防止し、誤りがわかった場合に是正する体制が構築されていなかった。遺族が故人を敬愛や、追慕の情をもって弔うことと遺骨の存在とは密接に結びついており、6年半もの間返還されなかったことによって受けた精神的苦痛は計り知れない」とした。

 遺族は、提訴から半年後の2022年9月、神戸地裁が提示した和解協議に応じようとした。しかし、その後神戸地裁が和解金額として大学側に300万円という案を提示したところ、大学側は拒否したという。

 男性の長女は「献体は亡き父が望んでいたこと。大学は火葬した後であることを理由にDNA型鑑定ができないと言われ、本当に父の遺骨なのかわからない。大学側は、そもそも遺骨自体を軽んじているのではないか。学長自らの謝罪の言葉を聞きたかった」と話した。

 兵庫医大は「現時点で判決文が届いていないため、コメントは差し控える」としている。