ドラァグクイーンのサマンサ・アナンサとインスタグラマーのウラリエが、金曜日にパーソナリティーを務める番組『Clip』(ラジオ関西、月−金午後1時〜)。テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマなど、さまざまなVIPを担当してきた同時通訳者・田中慶子さんをゲストに迎え、通訳の仕事について掘り下げた。

 通訳の仕事について尋ねられた田中さんは、「国際会議で通訳ブースに入って業務を行うこともあれば、要人に同行してミーティングに参加したり、イベントを訪れたりとあらゆる場所に行く」と説明した。

「どうすれば同時通訳者になれるのか?」という質問には、「資格は必要なく、通訳学校でトレーニングを受けるパターンが多い」と解説したうえで、「仕事がくれば通訳者(を名乗れる)という感じです」とコメント。意外と知られていない通訳者の世界に、パーソナリティーの2人は興味津々な様子で聞き入っていた。

 収録前日まで、西海岸の砂漠地帯で行われるアメリカ最大級の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」の現場にいた田中さん。日本から同イベントを訪問した、音楽業界の人の通訳として同行していたのだそう。

 現場での様子について、「音楽好きが集まるフェスなのでノリもよくて。仕事で行ったんですけど、つい踊ったりしちゃっていました」と笑いまじりにコメント。こうした現場では、細かいニュアンスや気持ちを伝えるために、実際にライブパフォーマンスを見て雰囲気を感じ、“生”の情報を取り入れることも大事なのだと持論を語った。

 サマンサの「通訳の内容ひとつで人のイメージが変わってしまいそうなので、すごく繊細な業務。事前準備とともに、現場での瞬発力も必要だと思う」という言葉に、大きくうなずいてみせた田中さん。

「辞書のように『この言葉はこれ』と、ただ訳せばいいというものではなく、(相手に)伝わらないと仕事をしたことになりません。その人の立場や、なぜその言葉を発しているのかなど、さまざまなことを考えながら訳しています」と、仕事にかける熱い思いを語ってくれた。

 リスナーから寄せられた、「同時通訳をしていて、『今日は機嫌が悪いなあ』など、相手の気分がわかったりはしますか?」という質問には、「『機嫌が悪いな』と感じることは少ないですが、『緊張しているな』というのはすごく感じます」と回答。

 たとえ、社会的地位があったり有名人であったとしても、スピーチや大事な商談の前は緊張している様子が感じ取れるという。そのため、あくまでもサポートをする立場である通訳者の緊張を見せないことも大切なのだと、自身の信条を明かした。

 そもそも、「同時通訳者」は英語でなんと呼ぶのだろうか? サマンサから飛び出たふとした疑問に、田中さんは「『トランスレーター』とよく間違われるのですが、これは文章を書く『翻訳者』のことを指します。私自身は、『同時通訳者』は『インタープリター』と説明しています」と答えた。

(取材・文=バンク北川 / 放送作家)

※ラジオ関西『Clip金曜日』2024年4月19日放送回より