温泉や銭湯・スパ施設が点在する日本は“風呂文化”がとても盛んな国。一方、世界各地でも古代ローマ時代に作られた公衆浴場やフィンランドで発展したサウナなど、独自に発展した入浴文化が存在します。アフリカの北西部に位置する国、モロッコで親しまれている「ハマム」もそのひとつ。一体どのような文化なのか、モロッコ雑貨のネットショップ「-raha-」を運営する木村仁美さんにリアルなハマム事情について教えてもらいました。

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 モロッコのスリッパ「バブーシュ」や伝統技法で織られたラグなど、現地で雑貨をセレクト&バイイングする木村さん。モロッコ人の男性と結婚し、これまで何度もモロッコに足を運んできました。 そんな木村さんのショップで扱っているのが「ハマムボウル」というアイテムです。これは、ハマムに入る際に湯を汲んだりガスール(泥パック)や石鹸などを入れて使うもの。こう聞くと、ハマムは日本の浴場とよく似ているように思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

「ハマムは日本でいう公衆浴場のようなものですが浴槽がありません。かわりにサウナや垢すりのスペースがあります。モロッコの住宅には日本と同じくシャワーや浴槽はあるので、スパ施設や温泉のようにたまに行く娯楽のようなものですね」(木村さん)

「ハンマーム」というアラビア語が元になっているハマムは、「浴場」という意味を持ちます。岩盤浴やサウナのように蒸気が漂う空間となっており、そこで汗を流し、マッサージやあかすりをするというのが定番のスタイルです。アラブ諸国や中央アジア・東アジアなどさまざまな国に広がったハマムですが、特にトルコとモロッコでは伝統的な文化として浸透しています。主にイスラム圏で広まった文化ということで、入浴スタイルにも日本とは違った点が見られるそうです。

「日本ではお風呂やサウナは何も身に着けずに入るのが基本ですが、ハマムには下着を着けて入る人が多いんです。イスラム圏の方は、宗教的な理由から下半身を隠す必要があるためです。これは入浴時の必須ルールではないので、観光客は自由なスタイルで入っても大丈夫です」(木村さん)

 また、ハマムは男女別となっています。かつてのイスラム圏では女性は自由に外出することができず、家族以外の男性を避ける必要がありました。そのため、ハマムは女性たちで会話や情報交換を楽しむ場所としても機能していたのだとか。今でもハマムにはその名残りがあり、女性が集まる憩いの場として愛されているそうです。

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 実際にハマムを利用した木村さんは、「ローカルなハマムに行ったので、観光客もおらずアジア人自体が珍しいようで視線が痛かったです(笑)。でも日本のサウナほど熱くなく、ちょうどいい温度で気持ちよかったです」と振り返ります。さらに、最近のモロッコでは、自宅にハマムを作る人やハマム用の窯を使いパンを焼く店も増えているそうですよ。

(取材・文=つちだ四郎)