トイレの便座に座る際、“姿勢”を意識していますか? おそらく、何気なく座り、用を足しているのではないでしょうか。実は便座での姿勢は、多くの日本人が悩まされる「便秘」を改善する可能性があるそうなのです。大腸肛門病センター高野病院(熊本市)の高野正太院長に話を聞きました。

☆☆☆☆ 

 一般的に、椅子に座る時の「正しい姿勢」は背筋を真っ直ぐにするのが良いとされ、猫背になるのは「悪い姿勢」だとされています。ですが、便座に座る場合は“その限りではない”と高野院長は考えているそう。

「留学した米国の病院で行った研究では、『背筋を伸ばした真っ直ぐな姿勢』では22名が排せつできませんでした。そこで彼ら全員に前傾姿勢を取らせたところ、11名が完全に排せつできました。検査中のX線写真を解析すると、前傾姿勢では直腸と肛門がつながっている部分がほかの姿勢に比べてまっすぐになり、肛門を締め付けている筋肉も緩むため便が出やすくなると結論づけられる」とのこと。研究の結果、排便においては、ロダンの『考える人』のような前傾姿勢が理想であると説明しました。

『考える人』の姿勢に加えて“膝の位置を高くする”ことも、より効果を得ることができるのだとか。踵を浮かして膝の位置を高くする方法もありますが、踏ん張りをきかせづらいため「踏み台」を使用するのが理想だと高野院長は言います。

 便秘解消の手段として姿勢も大切ですが、スッキリ排便できない大きな理由は「大腸の動きが悪い」ことと、「直腸と肛門の動きが悪い」こと。高野院長によると、それらを是正するためには正しい食生活が必要だそうですが、「根本的な原因を探りに行くことなく下剤に頼り過ぎる」など、多くの人が間違った対策を取りがちなのだとか。食物繊維が便秘に良いからといって摂取し過ぎてしまうと、便が硬くなり逆効果なのだそうです。

☆☆☆☆

 便秘に悩む人も予防したい人も、まずは“便座での姿勢”と“食生活”を見直してみるといいかもしれません。

(取材・文=宮田智也)