自然体験、好きな遊びに没頭できるコーナー保育、異年齢児の交流―。コミュニケーションや意欲といった非認知能力を高める教育を先駆けて実践してきた木の実幼稚園(前橋市粕川町室沢)の名物園長で、昨年1月に急逝した金子仁さん(享年64歳)が遺(のこ)した文章やコラムをまとめた書籍「金子仁文集 木の実幼稚園が育むもの」が刊行された。

 金子さんは1984年、両親が開設した同園に入職し、96年から園長を務めた。木工コーナーや探検遊びなどを取り入れ、自然体験の場を提供するため約2ヘクタールの野外研修場「遊びの森キャンプ場」を整備。ツリーハウスや巨大ハンモックなどを設けて、子どもが自ら遊びを見つけ、学んでいく教育を実践した。

 「園長、あそぼう」。代わる代わる園児が誘いに来ると、どんなに忙しくても事務を放り出して探検に出かけた。自らも泥だらけになり、にこにこと見守った。育英短大教授としても活躍したが、昨年1月11日に同短大で倒れ、亡くなった。

 突然の別れに打ちひしがれた妻で現園長の恵子さん(64)だったが、金子さんが以前に「自分の考えを本にできたらいい」と言っていたことを思い出し、書籍化を決めた。

 書籍は、保護者に向けた園だより、育英短大での論文、新聞に掲載されたコラムなどで構成されている。園での実践や子どもとのやりとりを紹介して自身の教育論を展開していて「子どもが言うこと、することに意味のないものは一つもない」といった熱い思いが伝わってくる。

 恵子さんは「書籍化する中で、改めて幼児教育と真摯(しんし)に向き合っていたことを気付かされた。子育てや教育に関わる人に読んでほしい」と話している。

 A5判、250ページ、2千円。問い合わせは同園(☎027-285-4832)へ。