相手と自分に共通点があると、距離感は一気に近くなるもの。特に恋愛の場では、好きなものや興味を抱くものが似ている相手を気になってしまうことは多くあります。

 しかし、知り合って間もない場合は、それが真実なのか、注意深く観察する必要があるようです。

 木村紗枝さん(30歳・仮名)は、同じ猫好きの男性と知り合えたことに喜びを感じて交際をスタート。結婚も考えましたが、ひょんなことから彼の嘘を知り、よく知らない相手の話を鵜呑みにすることの危険性を学びました。

◆“猫好き男性”を条件に婚活を開始
「どんどん結婚していく周りの友達を見て、このままじゃやばいかもと思って、婚活を始めました」

 そう語る紗枝さんは、ロングヘア―が似合う上品な女性です。マッチングアプリを利用し始めたのは、今から1年半ほど前のこと。彼女には絶対に譲れない条件がありました。

「私は猫が大好きで、猫がいない生活は考えられない。だから、将来一緒になる人は猫と暮らすことに理解がある人がいいなと思っていました」

 紗枝さんの自宅には、保護猫カフェから迎えた2匹の愛猫がいます。マッチングアプリでは自分だけでなく、愛猫たちのことも大切にしてくれる猫好き男性を探していました。

◆マッチングアプリで出会った猫好き男性と意気投合
 そんな時に出会ったのが、2つ年上の祥吾さん(仮名)。祥吾さんはプロフィールで猫好きをアピールしていました。実際に猫と暮らしてもいるようで、爽やかな印象を与えるプロフィール写真にはかわいらしい愛猫の姿も写っていました。

 気が合いそうだと思った紗枝さんは、祥吾さんに「いいね」を送信。すると、見事にマッチング。猫トークで盛り上がった2人はデートの約束を交わしました。

「2回目のデートで、彼から告白されました。これで夢見ていた、猫にまみれた結婚生活が送れるかもしれないと思い、嬉しかったです」

◆噛み合わない猫トークに違和感
 ところがしばらくすると、「彼は本当に猫好きなのだろうか……」と思う出来事が起こり始めます。そのきっかけは、ペット火葬の話をしていた時のこと。

「長年、一緒に過ごしてきた家族だから、別れる時はきちんとした業者を選んで供養してあげたいし、お骨アクセサリーも作りたいんだよね、と彼に話したら、『いくらかかるの?お金がもったいなくない?行政で燃やしてもらうだけで十分じゃないかな』と言われて……。その言い方に、なんだか愛がないなと感じました」

 さらにデート中、紗枝さんが愛猫にあげているキャットフードを購入しようとすると、『こんな高いエサをあげてるの!?数百円のもので十分じゃない?過保護すぎだよ(笑)』と、彼は仰天。紗枝さんは、その発言にもモヤモヤしたといいます。

「彼は猫を目にするとかわいいと言い、撫でることもするけれど、猫への想いや、あげているキャットフードなどを深堀りしていくと、愛が感じられなくて。猫好きだって言っているのは本当なのかな……と疑うようになりました」

◆初めて行った彼の部屋で、嘘が発覚
 そんなある日、紗枝さんは初めて彼のアパートへ行くことになりました。

「彼の猫と会えることも楽しみにしていたのですが、前日に体調を崩して入院してしまったと言われました」

 少し残念に思ったものの、紗枝さんは初めてのおうちデートを楽しもうと自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えて、彼のアパートへ。しかし、そこで彼の嘘が発覚しました。

◆彼の部屋でリードに繋がれた猫を発見
 それは、彼がトイレに立った時の出来事。リビングにいた紗枝さんの耳に、「ぬあー」と言う、か細い猫の声が耳に飛び込んできました。声がする方向は、「寝室だから入らないで」と言われていた隣の部屋。

 なんとなく嫌な予感がした紗枝さんは、彼に怒られることを覚悟し、隣室へ。すると、そこにはリードで繋がれ、自由に身動きができずに苦しんでいる猫の姿が目に入ってきたといいます。

「猫用のトイレはなく、ペットシーツが敷かれているだけで、近くには粗相の痕がたくさん。リードは水を飲む、ご飯を食べるといった必要最低限の行動ができる長さでした」

◆女性ウケのために、元カノが置いていった猫を利用
 衝撃的な光景を目の当たりにした紗枝さんは、愕然。すぐさま彼を問いただすと、意外な真実が明らかになりました。

「猫は元カノが置いていった子。彼は仕方なく育てていると言いました。本当はそんなに猫は好きじゃないけれど、猫の写真をマッチングアプリのプロフィールに載せたら女性から連絡が来ることが増えたので、猫好きだと言うようになったそうです」

 嘘をついていたことはもちろん、猫をぞんざいに扱っていたことに怒りを覚えた紗枝さんは猫を引き取り、彼と別れることにしました。

「引き取った猫は今、私の家で暮らしながら里親を待っています。今まで、人の都合に振り回されてきた分、これからは思いっきり幸せになってほしい。そして、動物のかわいさを自分のアピール材料として使うような人が減ってほしいです」

 知り合ったばかりの相手が口にする「好き」をどこまで信じるか。紗枝さんの体験談は、そんなことを考えるきっかけを与えてくれます。

<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291